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「ナレッジ」とは何か?:コパイロツトがナレッジ・マネジメントで目指すもの

コパイロツトの米山です。

コパイロツトでは、社内にKMO(ナレッジ・マネジメント・オフィス)チームを立ち上げて、ナレッジ・マネジメントに取り組んでいます。

なぜ、いまさら20年前に流行したナレッジ・マネジメントに取り組むのか。 それは、社会がより複雑化するとともに、膨大な情報が反乱する現代において、「何をしたらよいか分からない」状況に社会全体が陥っており、(どのような形であるにせよ)ナレッジ・マネジメントすることが避けられないためです。

本記事では、ナレッジ・マネジメントとは何か?ナレッジとは何か?というところを整理しながら、コパイロツトがナレッジ・マネジメントを通じて目指している姿をお話したいと思います。

ナレッジ・マネジメントとは?

そもそも、ナレッジ・マネジメントとは何でしょうか。

「ナレッジ・マネジメント」とは、一般的には「個人のもつ暗黙知を形式知に変換することにより、知識の共有化、明確化を図り、作業の効率化や新発見を容易にしようとする企業マネジメント上の手法。」(出典:Wikipedia)と定義されていますが、その本質は野中が用いた「知識経営」という言葉が表しているように、「経営」のあり方そのものを問うところにあります。

つまり、単に情報を共有したり分析したりということにとどまるものではなく、情報から価値を生み出していこうとするモチベーション・コミュニケーション・組織形態など組織・個人のあり方そのものが問われているということです。

重要なのは「理解」

「経営」の視点から「知」を考える際に重要な点は、「理解」です。

なぜなら、どんなに素晴らしい「知」であっても、「理解」されなければ絶対に「活用(思考・行動)」されないからです。「考えること」や「行動すること」などを導く資源が「知」であって、そこに繋がらなければ「知」ではありません。それは、いくら食事が大事だからといって、大量に摂取したり、体に合わないものを摂取することが不適切であるのと同じです。体が必要としている栄養を適切な量・適切な形で取得することが重要です。

そして、「理解」の質を高めていくためには、「どのような情報を摂取すべきか」という「判断」と、「摂取」「理解」した結果、当該情報自体の質や活用の仕方がどうだったかという「検証」が欠かせません。不必要な情報を盲目的に摂取し続けてもそこから生み出される価値はありません。ナレッジ・マネジメントを機能させるということは、この「判断→摂取→理解→考察→行動→検証」というプロセスを機能させることに他なりません。

「情報」とは何か?

なぜ、このような考え方をしているのか。その理由は、そもそも「情報」とは何かということを考えることで明らかになります。 情報の定義を考える際にしばしば参照されるモデルに「DIKWモデル」があります。

 
図 DIKWモデル (出典:https://en.wikipedia.org/wiki/DIKW_pyramid


これは、「知」が「Data:データ」「Information:情報」「Knowledge:知識」「Wisdom:知恵」から構成されるとするモデル(DIKWモデル)で、梅本によれば、それぞれ下表のように定義されています。その中で、1)「行為に繋がる」こと(知識の定義)、2)「評価」「検証」が不可欠であること(知恵の定義)は、「知」の性質を表現している指摘として示唆的ですが、同様の考え方は、DIKWモデルを別の視点から整理したネイサン・シェドロフのモデル(下図:理解の外観図)にも表れています(たとえば、「知識」と「経験」との関係や、「知恵」における「内省・評価」)。

 

表 梅本による「データ」「情報」「知識」「知恵」の定義

データ 生命体(人間)が創り出した信号・記号(文字・数字)の羅列
情報 データから抽出された断片的な意味
知識 行為につながる価値ある情報体系
知恵 実行されて,有効だとわかり,時間の試練に耐えた知識

(出典:梅本勝博「ナレッジマネジメント最近の理解と動向(情報の科学と技術62巻7号)」)




図 理解の外観図 / ネイサン・シェドロフ (出典:それは「情報」ではない。(リチャード・S・ワーマン))


このネイサン・シェドロフの「理解の外観図」は、「発想法」として知られる「KJ法」の考え方とも類似性があります。シェドロフが「理解の外観図」の中でDIKWのそれぞれの「知」における行為を定義していますが、対応する形で同様の言及がKJ法におけるW型問題解決プロセスにも見られます。

表 「理解の外観図モデル」と「W型問題解決プロセス」との対応

ナレッジの種類 理解の外観図 KJ法におけるW型問題解決プロセス
データ 調査、創造、収集、発見 探検・野外観察
情報 発表、分類 ラベルづくり、グループ編成身
知識 会話、物語、統合 図解化、文章化
知恵 内省、評価、熟考、回顧 吟味検証、評価

(出典:コパイロツト)

「理解の外観図」と「KJ法におけるW型問題解決プロセス」の対応の中で特に言及したいのは、「理解とは、データ(Data)から知恵(Wisdom)への連続した観念と考えるべき」(ネイサン・シェドロフ)ということです。ある「知」というものは、具体と抽象を何度も往復されていく、きわめて「動的」「循環的」なプロセスです(川喜田二郎(KJ法)の言葉を借りれば「経験レベル」と「思考レベル」を往復しながら、また、野中郁次郎(seciモデル)の言葉を借りれば「暗黙知」と「形式知」を往復しながら、収集され、分類され、統合(図解化・文章化)されていくプロセス)。「知」の価値を高めるためには、そのようなプロセスを生み出すための環境づくりが何よりも重要です。

コパイロツトが行っているナレッジ・マネジメントに関する取組

コパイロツトでは、クライアントおよびコパイロツト内部に対して、「具体」と「抽象」を何度も往復しながら、「物事の理解度」や「知の質」を高めていく仕組みを導入しています。下記にその一部をご紹介します。

プロジェクトや会議の振り返り

プロジェクト(事業)や会議の質を高めていくためには、都度それらを振り返ることが欠かせません。いわゆる「実践知」を蓄積し、ナレッジに昇華させていくことが次のプロジェクトの質を向上させることに繋がります。コパイロツトでは、様々な状況に応じた振り返りの手法を体系化しています。

KJ法などの古典的知見のデジタルマーケティング分野・新規事業創造への適用

コパイロツトでは、KJ法などの古典的知見をあらためて学び、現代のデジタルマーケティング分野・新規事業創造への適用方法を研究しています。

読書メソッド&読書ナレッジを共有する仕組み

組織に「知」を蓄積していくための重要な手段である「読書」についても、限られた時間の中で、いかに読み、いかにナレッジとして活用できる状態に持っていくか、という仕組みを構築し、日々活用しています。

各種のメソッドを作るための仕組み(メソッド化プロセス)

上記のようなメソッド構築以外にも、よりメタな視点からメソッドを作るための仕組み(「メソッドサイクル」と呼んでいます)を構築しています。このメソッドサイクルでは、「プロセス」「プロセス毎のインプット・アウトプット」「役割分担」に関するフレームワークを定義し、社内における各種のメソッド開発に活用しています。



コパイロツトのKMOチームが目指していること

コパイロツトは、クライアントの「copilot / 副操縦士」として、

  1. それぞれの組織が持っている力が最大限に発揮される環境を作ること

  2. 自律的/持続的にアップデートし続けられる組織化をサポートすること

  3. 最終的には、常に新たな価値を提供し続けるパートナーに進化していくこと


を目指しています。

そのためには、上記で述べてきたようなナレッジ・マネジメントの仕組みが不可欠ですが、ナレッジとの付き合い方を工夫することで、「ナレッジ・マネジメントするぞ!」と力まなくても、自然とナレッジが活用され、個人・組織の力が高まっていくような状態を作ることができると考えています。

「知」を媒体として、学習し続けること、質の高いコミュニケーションを行い続けること、組織としての力を向上させ続けること、新たな価値を社会に対して創造し続けること。コパイロツトは副操縦士として、そのようなナレッジ活用・組織づくりをサポートいたします。是非お気軽にご連絡ください。

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また、このブログでも、ナレッジ・マネジメントについてコパイロツトが行っていることや、ナレッジ・マネジメントの様々な概念について触れていきたいと思います。今後とも、お読みいただければ幸いです。




執筆者 米山 知宏(よねやま・ともひろ)
プロジェクトファシリテーター、プロジェクトコンサルタント。

プロジェクト・組織の推進をPMとして関わりながら、プロジェクト・組織の未来に必要なナレッジ・知を言語化するサポートをしています。
対象分野は民間企業のDX領域が中心となりますが、シンクタンク・パブリックセクターでの勤務経験から、公共政策の立案・自治体DXに関する業務も担当しています。


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