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エドガー・シャイン「謙虚なコンサルティング」読書会

みなさま、こんばんわ。ナレッジマネジメントオフィスの吉岡です。

今回も前回に続きABD(アクティブ・ブック・ダイアローグ)がテーマです。

実は前回の「Management3.0」の前に「謙虚なコンサルティング」を題材にABD開催していたので、その報告をしたいと思います。

 

<コパイロツトABDの会>

第一回「謙虚なコンサルティング」←本記事です。

第二回「Management3.0」

blog.copilot.jp

 

ABDの詳細は、アクティブ・ブック・ダイアローグ協会のWebサイトをご覧ください。

 

謙虚なコンサルティングとは?

さて、今回の題材にした本は「謙虚なコンサルティング」という本です。

謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か

謙虚なコンサルティング――クライアントにとって「本当の支援」とは何か

 

著者はエドガー・シャインという組織開発や組織文化を研究している心理学者です。日本でも「プロセス・コンサルテーション 援助関係を築くこと」や「組織文化とリーダーシップ」など人気の本を出されています。

そんな著者の最新作が、本著です。原題は「Humble Consulting: How to Provide Real Help Faster」となっています。弊社でも取り入れるべき姿勢や考え方が多くあると考えて、今回ABDの題材にしました。

 

謙虚なコンサルティングの内容まとめ

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最終的にまとめた全体図です。鉛筆で読みづらいですがご了承ください。

現代は「問題の複雑化」が進んでいます。解決方法が高度になれば、さらに問題も高度になるいたちごっこのような現象が仕事においても起きていると著者は考えます。ここでの複雑な問題とは「専門性が高い問題」「国民性」「文化の違い」「変化のスピードが早すぎるもの」などが該当しており、これらの問題には従来のコンサルティングの手法は通用しないと言われています。そこで考案されたのが「謙虚なコンサルティング」という手法です。

人間関係の4つのレベル

この手法では人間関係を以下の4つのレベルに分けています。(P69より引用)

レベル3

深い友情、愛情、親密さ
例)強くポジティブな感情を伴う関係

レベル2

固有の存在として認知する
例)個人的な知り合い、同僚、クライアント、場を共有したために個人的にしるようになったが親密というわけではない上司、たまに会う友人

レベル1

認め合うこと、礼儀、取引や専門職としての役割に基づく関係
例)街で会った見知らぬ人、電車で隣に座っていた人、医者や弁護士など他人を支援する人

レベル-1

ネガティブな敵対関係、不当な扱い
例)囚人、戦争捕虜

本書では、この4つのレベルのうちレベル2の関係を目指すべきということを書いています。レベル1の場合、関係性がや規範、手順が固定されているため、なかなか課題の本質に辿り着けないことが多くなってしまいますが、他方レベル3も、その親密さゆえに馴れ合いや腐敗が起こりやすいと書かれています。

レベル2の関係は、コンサルタントとクライアントが取り組む共同の課題を中心に人間関係が築かれるため、望ましい関係とされています。

コンサルタントは本当の課題や思いをできるだけ早く知るために、個人的な関係を作ろうとしますが、そこには「信頼」と「率直さ」が必要であり、それらがクライアントの本当の思いや考えを明らかにしていくとのことです。以下、少し例をあげてみます。 

-----------------------

レベル1

ク「文化調査をお願いしたいです」
コ「わかりました。どのような文化調査をお考えですか」

レベル2

ク「文化調査をお願いしたいです」
コ「もう少しご説明いただけますか」
 「文化調査をしたいのはなぜでしょうか」
 「今のあなたのお考えはどのようなものでしょうか」

-----------------------

レベル2の関係では、このようにお互いの信頼と率直さによって課題や相手の考えを明確にすることができます。

レベル2を目指すための重要な行動もいくつか紹介されています。

3C

  • Caring(思いやり)
  • Curiosity(好奇心)
  • Commitment(積極性)

3つの聴き方

  • 自己中心的に聴く
  • 概念について聴く
  • 人について聴く

4つの問いかけ

  • 示唆的な質問
  • 診断的な質問
  • 循環的な質問
  • プロセス指向な質問

パーソナライゼーション(自分のストーリーを伝え合う)

問題が複雑な場合すぐに解決には至りません。そこで重要になるのがアダプティブ・ムーブです。アダプティブ・ムーブとは、解決策ではないが状況を改善したり診断的なデータを引き出す行動のことを指します。ここで「ムーブ」と呼んでいるのは大きな計画や介入ではなく、ちょっとした取り組みだからです。

このアダプティブ・ムーブをクライアントと一緒に探して状況改善を繰り返して行くことが重要と著者は言っています。

ABDをどのように進めたか?

上述の通り、この回で初めて導入したABDだったのですが以下のように進めてみました。今回は合計で317ページで一人当たりの量が多いため時間を変更しています。(本来はページ数で時間を増減しないのですが、最終アウトプットすることを考慮して時間を増やしました)

  1. オープニング
    1. チェックイン「今日、君は何に貢献するのか?」(1人1分×4人 4分)
    2. オリエンテーション(10分)
  2. メイン
    1. コ・サマライズ(60分)←ページが多かったので増やしました。
    2. リレープレゼン(1人2分)
    3. ダイアログ(30分)

------------------------------------------------------------------- ←本来ならここまで

    1. アウトプット(A3で図解を2セット実施)
      1. 各自で書く(5分)
      2. 共有(5分)
    2. まとめ(15分)
    3. まとめた後に最後の仕上げ担当者決定(3分)
  1. エンディング
    1. チェックアウト(1人1分×4人 4分)

全部で約3.5〜4時間かかりました。上記の進め方の詳細については前回の記事で書いているので割愛させていただきます。

「A3で図解を書く」というのはコパイロツトのKMOチームがよく使う手法でこれも近日中に本ブログでご紹介したいと思います。

 

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当日の様子、議論の時間は机に紙を敷いて書きながら議論する。整理も説明もできるので効果的。

 

個人的な感想

初めてのABDだったので、約80ページを60分で集中して整理しながら読むという作業は結構大変でした。 ただここ数年、本を読むことより読んだ後に「整理すること」や「議論すること」の重要性を感じていたので、今後も使える手法だと思いました。

自分一人で精読するのとは全く違う読書体験であり、アウトプットとしてまとめの図が残るのとチーム全体で議論するので記憶が全員に残るのも特に良い点だと思います。またチームワークを高める手法にも大いに有効だと感じました。

(ただ題材の本を選ぶのが難しいです。ということで次回のABD開催までもう少々お待ちください!)

 

また、本著でのシャイン博士の主張や姿勢は、個人的にはコパイロツトが目指している姿に非常に重なるところが多いと感じました。目の前の課題をただただ解決するのではなく、クライアントとの関係性を大事にしながら協力して、より複雑で本質的な課題を解決できるように努めていければと思います。

 

おまけ. シャイン博士のプロフィールを調べていたところ「陸軍の研究所で洗脳研究を行った後.....」と書いてあり少しゾッとしましたw


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