有意義な情報共有を行うにはどうすれば良いのでしょうか。
相手の知っている情報を提供しても、情報量は無いに等しい。また提供した情報が相手の判断に不要であれば、それはデータでしかないわけです。 つまり、A. 相手が知らないが、B. 相手に必要である、という2点をクリアすることが必要条件となります。
- に関しては、ジョハリの窓が有効なフレームワークです。
1955年にアメリカの心理学者ジョセフ・ルフトとハリ・インガムが発表した「対人関係における気づきのグラフモデル」ですが、これは情報を自分と相手の「知っている」「知らない」で四象限に分類しています。
しかし、実際に情報共有をする場では、相手が何を知らないか分からない訳です。ここにもう一軸「相手が知っているか知らないか、知っている」「相手が知っているか知らないか、知らない」という軸を加えてみると、実用性が出てきます。
図解すると、こんな形です。
単なるジョハリの窓モデル(情報の完全性を前提)とした場合には⓪までしか共有されないことが分かります。質問や指摘を通して、互いが何を「知っている」「知らない」のかを共有することで、初めて①に辿り着きます。つまり中身の情報共有の前に、「知っている」「知らない」の情報共有を行うことが不可欠なわけです。
次に②に至るにはどうすべきでしょうか。原理的に②の「知らないことすら知らなかった」情報の特定は両者共に行えないため、偶然に任せるしかないのでしょうか。この解決の糸口は情報共有たるもう1つの必要条件、B.相手の判断に必要である、です。
そもそも「知ってる」「知らない」とは何かという話になるのですが、ポランニーは人は語れる以上を知っている“we know more than we can tell”(Polanyi, 1966)と暗黙知の存在を語ったわけですが、逆もまた正でして、人は知っている以上のことを語ることができる"tell more than we can know"(Lindkvist ,2005)という命題がナレッジ・クリエーション研究の基礎になっています。人は絶えず未知の状況下で判断を行っており、その判断のためにデータから情報を抽出します(Goldratt, 1990)。この過程で、自分が「知らないことすら知らなかった」情報を手に入れるわけです。コパでは、これをインフォメーション・スィフティングと呼んでいますが、それは別の機会にお話しします。
ジョハリの窓に戻ると、要するに②は自分の課題感と照らし合わせた質疑応答を通じて、あるいは対話の中で得られるということが分かります。
これらに気を付けていれば、有意義な情報共有の場を設計できますし、その評価(⓪~①どこまで情報共有できたのか)を詳細に行うことが出来ますね。以下、様々なナレッジシェアの形態を図示してみました。ご参考までに。