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ナレッジ・マネジメントの導入=業務プロセスを再定義するということ

ナレッジ・マネジメントに対して、「必要性はわかるが、それをわざわざやっている時間がない」という反応がなされることがあるが、ここから思うのは、ナレッジ・マネジメントというものが、業務とは別の特別なものとして考えられてしまっているのではないかということである。

ナレッジ・マネジメントは、仕事を進めるプロセスから独立して存在しているものではなく、仕事を進めるプロセスとともに行われるものである。その意味では、極めて日常的な活動であり、業務プロセスの中にナレッジ・マネジメントを日常的な活動として組み込むことが重要である。

業務プロセスの中にナレッジ・マネジメントのプロセスを組み込む意義


業務プロセスの中にナレッジ・マネジメントのプロセスを組み込む意義としては、下記が指摘できる。

①ナレッジ・マネジメントにかける負荷を軽減できる
まず、業務・プロジェクトのプロセスの中にナレッジ・マネジメントを位置づけることで、ナレッジ・マネジメントの負荷軽減に繋がる。
たとえば、「議事録を取る」という行為一つとってもそうである。普段、会議の議事録をどのように取られているだろうか。1)会議のやり取りを録音して、後からそれを聞き直して議事録化した上で、関係者に承認を取るケースもあれば、2)Googleドキュメントなどのクラウドサービス上で、会議中に複数人が議事録を取り、会議時間内で議事録を完成させてしまうケースもあると思われるが、1)のようなやり方は非常にコストもかかるとともに、次のアクションが迅速に取れないという点で問題がある。これは、ナレッジ・マネジメントのプロセスを考える上でも同じである。ナレッジ・マネジメントの活動は、なるべく業務そのものの活動から独立した活動とせずに、業務プロセスの中で行われることで、より効率的・効果的なものとなる。

②プロジェクト自体の質の向上に繋がる
また、業務プロセス(プロジェクトのプロセス)の中にナレッジ・マネジメントを位置づけることにより、業務・プロジェクト自体の質の向上にも繋がる。たとえば、営業フェーズにおいて、その経過やクライアントから指摘されたことをログに残し、かつ、その内容をふりかえることで、実際に業務・プロジェクトを遂行する計画を改善することができ、業務・プロジェクト自体の質が向上する。つまり、同じプロジェクトの中で、後工程に良い影響をもたらすのである。

業務プロセスにあわせて、ナレッジ・マネジメントの活動を定義する


では、具体的にどうすればよいか。
それは、業務プロセスを可視化した上で、その各工程においてどのような情報・ナレッジを記録したり顕在化させる必要があるかということを定義することである。

たとえば、企業の大半の業務は「営業フェーズ」→「遂行フェーズ」→「納品・報告フェーズ」の3つから成り立っていると言えるが、それぞれのフェーズにおいてどのような情報をどのように蓄積すべきか。それをなるべく、日常的に行っている業務の中に位置づけることで、前述のように過剰な負荷なく、ナレッジ・マネジメントを進めていくことが可能となる。

一方で、ナレッジ・マネジメントを導入することは、業務プロセスを再定義するということ


ただ、それは、ナレッジ・マネジメントを導入する場合において、業務のやり方が現状のままで良いという話ではない。
ナレッジ・マネジメントは、それ自体が目的ではなく、何らかの組織的な目的のために行われるものである。
だとするならば、その目的に対して実施しようとしているナレッジ・マネジメントは十分なのかという検証が必要であり、もし十分でないのであれば、業務自体を見直し、適切なナレッジ・マネジメントの形をデザインする必要がある。
ナレッジ・マネジメントは業務プロセスを再定義することにほかならないのである。


執筆者 米山 知宏(よねやま・ともひろ)
プロジェクトファシリテーター、プロジェクトコンサルタント。

プロジェクト・組織の推進をPMとして関わりながら、プロジェクト・組織の未来に必要なナレッジ・知を言語化するサポートをしています。
対象分野は民間企業のDX領域が中心となりますが、シンクタンク・パブリックセクターでの勤務経験から、公共政策の立案・自治体DXに関する業務も担当しています。


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