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会議のアジェンダは、いつどのように作られるべきか

コパイロツトでは、会議を行う際に「アジェンダ」を明確にすることを非常に重視しています。アジェンダとは一言で言えば「議題」ということになりますが、具体的には「目的」「議論の進め方」「完了条件」などで構成されるべきもので、これらが明確になっていることで、質の高い議論を効率的に行うことができると考えています。以前のブログでも、コパイロツトで使用している「アジェンダシート」についてお話をさせていただきましたが、今回は、「アジェンダはいつどのように作るべきか」ということについて書いてみたいと思います。

アジェンダに対する考え方として、「参加メンバーに事前に配布すること」の重要性がしばしば指摘されます。つまり、会議の主催者(オーナーやファシリテーター)が会議に必要となる一連のアジェンダを定めて、それを事前に参加メンバーに配布することが会議をスムーズに行う上では重要であるという考え方ですが、個人的にはこれは「会議を時間通りに終わらせる方法ではあるかもしれないが、そもそものプロジェクト自体の質を高める方法ではない」と感じています。その理由として、以下の3点をあげたいと思います。

理由1:アジェンダはメンバー全員で作るべきもの

理由の1点目は、「アジェンダは会議のオーナーやファシリテーターだけで作られるべきものではなく、その会議の参加メンバー全員で作られるべきものである」ということです。変化の激しい現代のプロジェクトにおいて、ある一人がすべてを把握できているということはほぼありえません。リーダーがいくら優秀であったとしても、現場の担当者しか把握できていないことも存在しますし、顧客と直接やり取りをしている担当者が把握している情報は、プロジェクトを実施する上で非常に重要な情報であることも少なくありません。担当者が何かしら課題感などを感じているのであれば、それはアジェンダに組み込まれるべきであり、オーナーやファシリテーターだけでアジェンダを設計することは望ましいことではないと考えます。

理由2:必要なアジェンダは、プロジェクトの状況によって随時変わっていくもの

もう一つは、状況に柔軟に対応できるかどうかという時間的な観点です。主催者側がアジェンダを設計した上で、事前にそれを参加者に周知する場合、会議開催の数日前から1週間程度前にはアジェンダは決定しています。アジェンダの決定に組織内の決裁が必要となるところでは、実質的にはもっと前に決定している形になるかもしれません。そのような場合、仮に、アジェンダが実質的に決定した後に議論すべきアジェンダが発生しても、それはアジェンダに組み込まれず、次回の会議まで議論や意思決定が行われないという状況にもなりえます。一度だけであれば大丈夫かもしれませんが、このようなことが積み重なると、プロジェクトに多大な悪影響を与えます。

理由3:アジェンダが提示されるまでの間の時間が有効活用されない

3点目は、アジェンダが提示されるまでの時間が有効活用されない可能性があるということです。アジェンダは参加者に何かしらの事前準備を求めるものでもあります。しかし、事前にアジェンダが共有される場合でも、それが数日前では参加者も十分な準備ができない可能性があります(アジェンダを配る側も、参加者に事前準備を求めにくいのではないかと思います)。

理想的なアジェンダ設計プロセス

ではどうすればよいか。 以上の視点を踏まえると、理想的なアジェンダ設計プロセスの条件は以下のようなものになると考えています。

1) ある会議の終了時点で、次回の会議の(少なくとも主要な)アジェンダが設計されていること(別の言い方をすると、次回の会議アジェンダが設計されていることを会議の終了条件とすること)

2) 1)のアジェンダをベースに、次回会議までにいつでも・誰でも・どんなアジェンダでも追加できるようにすること

3) 最終的には、次回会議の冒頭でアジェンダを確定すること(このタイミングでのアジェンダ提示も許容する)

まず、1)のタイミングで、会議のオーナーが必要としているアジェンダがある程度共有されることにより(プロジェクトのスケジュールから逆算したトップダウン的アプローチによるアジェンダ設計)、次回会議に向けた準備期間が取りやすくなるのではないかと考えます。

それとともに、2)の期間で参加メンバーが感じている課題感などをベースにしたアジェンダが出されることで、現場視点の課題が提起されやすい状況が作れるのではないかと考えます(現場視点のボトムアップ的アプローチによるアジェンダ設計)。

最後に、3)でアジェンダを確定するプロセスがあることで、いま何を議論すべきかという視点を会議のオーナー・ファシリテーターだけではなく、参加者全員が持つことができると考えます。アジェンダの数が多い場合には、すべてのアジェンダを時間内に処理できない可能性もありますが、まずはメンバーが議論すべきというアジェンダ全てが提示されることが何より重要です。そして、そのタイミングで議論しておくべきという緊急度の高いアジェンダであれば、会議時間を延長しても議論すべきです。

一つ一つのアジェンダを迅速に意思決定していく

このようなプロセスに対して、「アジェンダの数が増えてしまって対処できなくなるのでは?」という指摘は当然あると思いますが、そこで問題になるのが、いかに「一つ一つのアジェンダを迅速に意思決定していくか」ということです。これは、以前からこのブログでも紹介している「ホラクラシー」の考え方によるところが大きいのですが、非常に参考になる考え方だと思われますので、簡単に紹介したいと思います。

ホラクラシーのMTGではアジェンダを誰でも自由に提起することができますが、各アジェンダを議論する際には、ファシリテーターがアジェンダの提案者に対して「(その課題を解決するために)あなたにとって必要なことはなにか?」という問いを投げかけます。「あなたにとって必要なこと」という視点が非常に重要で、これが議論を脇道に逸らせることなく、迅速な意思決定を行っていく上で極めて重要な Key Question になっています。つまり、「あなたにとっての解決策になっているかどうか」が議論すべき全てであり、唯一の終了条件であるということです。この問いによって、議論が別の話題に逸れることはありませんし、必要な意思決定が効率的に行われるようになります。会議がダラダラと長い時間かかってしまうのは、アジェンダの数の問題ではなく、アジェンダの終了条件が曖昧なままに、主題とは関係ない議論が行われてしまっているためではないかと思われます。

アジェンダ設計は、プロジェクトの質を高めるためのもの

冒頭にも記載しましたが、会議を予定時間どおりに終わらせることがアジェンダ設計の目的ではありません。そのプロジェクトを成功に導くために、その時点で必要な議論がすぐに行われ、プロジェクトをより良いものにするための意思決定が行われることが重要です。その場合、会議のオーナーやファシリテーターの役割はアジェンダを設計することではありません。適切なアジェンダがメンバーから提起されるような場を作ることが彼らの役割になるのではないかと思いますし、その方が、誰もが主体的に参加する会議になると考えています。



執筆者 米山 知宏(よねやま・ともひろ)
プロジェクトファシリテーター、プロジェクトコンサルタント。

プロジェクト・組織の推進をPMとして関わりながら、プロジェクト・組織の未来に必要なナレッジ・知を言語化するサポートをしています。
対象分野は民間企業のDX領域が中心となりますが、シンクタンク・パブリックセクターでの勤務経験から、公共政策の立案・自治体DXに関する業務も担当しています。


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