プロジェクトマネジメント・ナレッジマネジメント・組織づくりについてコパイロツトが
日々の実践を通じて考えていることをお伝えするメディア

「思考」を生むための「問い」。「問い」を生むための「思考」。

「美しい答えを得られるのは、いつも美しい質問のできる人である」


アメリカの詩人E・E・カミングスが語ったこの言葉に代表されるように、「問い」の重要性は多くの人によって指摘されてきました。 アインシュタインも、「ある問題を解決に1時間を与えられたら、そのうちの55分は自分が正しい問いに答えようとしているのかどうかを確認することに費やす」と言われたとされています。

以前のブログでも書いたように、コパイロツトでは現在、組織マネジメントの道具としてホラクラシーを試験的に導入しているのですが、ホラクラシーのMTGを実施する中で「問い」の重要性を再認識させられることがありましたので、このブログでは「問い」について考えてみたいと思います。

会議の議論を本筋から外れないようにするための「問い」

ホラクラシーで実施する会議では、各議題について議論するときに必ず投げかけられる2つの「問い」があります。


(議題の提案者に対して)「何が必要ですか?」
(議論の最後に提案者に対して)「必要なものが得られましたか?」


この2つの問いが行っていることは、「終了条件を明確化にすること」と「終了条件を満たしているかどうかを確認すること」ですが、多くの会議はこれがないために議論が行方不明になり、結論が曖昧になります。シンプルなフレーズですが、議論すべきことに議論を集中させ、会議を機能させるものとして極めて秀逸な「問い」だと思います。

本質的な顧客ニーズを探るための「問い」

クレイトン・クリステンセンが提唱している「ジョブ理論」でも、本質を追求するための有益な「問い」が紹介されています。


どんな“ジョブ(用事、仕事)“を片づけたくて、あなたはそのプロダクトを“雇用“するのか?


クリステンセンは、書籍の中で「ミルクシェイク」を例にあげていますが、それを上記の「問い」(ジョブの視点)から見ると、「ミルクシェイクをなぜ飲んだのか」という背景にあるジョブが明らかになります。たとえば以下のようなものです。


「仕事先まで、長く退屈な運転をしなければならない」 
「ドーナツはくずが落ちるし、手が油でべとべと - ハンドルを汚してしまう」
「ベーグルはぱさぱさしていて味がないし-ジャムを塗ろうと思ったら膝で運転しなければならなくなる」
「濃いからさ!ストローだと20分くらいかかる。-昼飯まで腹が持てばいいんだ。車のカップホルダーにもぴったりだし」


「なぜそのミルクシェイクを買ったのですか?」という「問い」では曖昧な答えになりがちなところ、「どんなジョブを片づけたくて、そのミルクシェイクを買ったのですか?」という「問い」にすることで本質的な顧客ニーズを把握することができる、素晴らしい「問い」ではないかと思います。

前向きに課題解決をしていくための「問い」

デザイン思考や課題解決のワークショップなどでしばしば使われる「HMW(How Might We):我々はどうすれば○○できるか?」という問いも、目の前の課題に対して具体的なアクションを促していくための秀逸な問いだと感じています。


(出典:https://www.toptal.com/designers/product-design/effective-design-sprint


「我々(We)」で語られることにより自分事として課題を考えられるようになりますし、「どうすれば」という視点を持つことで課題を前向きに捉えることができるようになると考えます(〜しなければならないという強制感から開放される)。

問いが<思考のきっかけ>と<物事の本質>を引き出す

これらはそれぞれ「問い」が投げかけられる状況や目的は異なっていますが、「問い」が思考のきっかけをつくり、それによってそれぞれの状況における本質を引き出しているという点では共通しているのではないかと思います。

ナレッジマネジメントも同様です。

たとえば、コパイロツトで行っているプロジェクトのふりかえりでは、様々な「問い」を通じてそのプロジェクトで起こったこと、感じたこと、分かったことなどを言語化していますが、その場で投げかけられている「問い」は極めてシンプルです。


・「何をしたのですか?」
・「いつしたのですか?」
・「どのように行ったのですか?」
・「なぜそれをしたのですか?」
・「なぜそう考えたのですか?」

プロジェクトで起こった一連の出来事に対して、これらの「問い」を組み合わせながら投げかけていくことで、プロジェクトの動きをリアルに思い出すこと(言語化)ができるとともに、「このような状況ではこうすればこうなるだろうというナレッジ(仮説)」が顕在化していくと考えています。

「問い」と「思考」の循環プロセス

これまで論じてきたことは「問い→思考・理解」という方向での議論でしたが、最後に「思考・理解→問い」という逆の方向についても簡単に触れたいと思います。

「問い」を創造するためのナレッジ・マネジメント - COPILOT BLOGでも論じたように、「問いと思考の関係」は双方向的・循環的なものだと考えています。ある「問い」から生まれた「理解」はそこで留まるのではなく、「理解」が新たな「問い」を生じさせうると思われますし、新しい「問い」を生み出すことこそが「理解」の本質ではないかと考えます。


シンプルな「問い」を通じて、現状に対する理解・アイデア・ナレッジを生み出し、さらには、それらの思考をもとに次の「問い」を自ら生み出していくというサイクルを実社会においていかに具現化していくか。
本稿の前半で言及した「シンプルな問い」は思考をスタートさせるものとして非常に重要ですが、そこからさらに、どのように新しい「問い」を生み出していくか。
これからも、「思考を促す問い」「物事の本質に近づくための問い」について研究していきたいと思います。



執筆者 米山 知宏(よねやま・ともひろ)
プロジェクトファシリテーター、プロジェクトコンサルタント。

プロジェクト・組織の推進をPMとして関わりながら、プロジェクト・組織の未来に必要なナレッジ・知を言語化するサポートをしています。
対象分野は民間企業のDX領域が中心となりますが、シンクタンク・パブリックセクターでの勤務経験から、公共政策の立案・自治体DXに関する業務も担当しています。


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