プロジェクトマネジメント・ナレッジマネジメント・組織づくりについてコパイロツトが
日々の実践を通じて考えていることをお伝えするメディア

チームワーキング ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方(中原淳、田中聡) [連載:プロジェクトを両利きでマネジメントしていくための1冊]

この記事は、「両利きのプロジェクトマネジメント ――結果を出しながらメンバーが主体性を取り戻す技術」(2025年6月16日発売)に関係が深い書籍を紹介する連載記事です。
現代のプロジェクトに必要なのは、タスク管理やスケジュール管理だけでなく、チームで物事を進めていくための技術であり、そのためには、これまでプロジェクトマネジメントの中であまり目が向けられてこなかった各種の知見にも目を向ける必要があります。
この連載では、プロジェクトマネジメントの理解を深め、みなさんがプロジェクトをマネジメントしやすくなる書籍を紹介していきます。

この記事で扱うテーマは「チームワーク」です。

「よいプロジェクトにしていくためにはチームワークが大切である」

この1文を聞いて、みなさんはどう思われるでしょうか。
おそらく、違和感を持つ人はいないでしょうし、チームワークが大切なのは当たり前ではないかという感想を持たれるかもしれません。

では、「チームワークをよくしていくために、プロジェクトの中でどのような活動を行っているか?」と聞かれたら、みなさんはどう答えるでしょうか?
「仲が良いことが大事なので、プロジェクトチームでたまに飲み会をするようにしている」「ちょくちょく雑談をするようにしている」「数か月に一度、プロジェクトマネージャーとメンバーとの1on1で話すようにしている」。
たしかに、これらの活動がチームワークに繋がっていく面もあるでしょう。しかし、「そんなことは散々やってきたが、あまり意味はない」と感じられる方もいらっしゃるかもしれません。「それらの活動はチームワークに繋がっているのか?」「そもそもチームワークとは何なのか?」ということを考え始めると、チームワークというものが簡単なテーマでないことに気づかされます。

本記事で紹介する書籍『チームワーキング ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方』(中原淳、田中聡)は、身近なようで実はよくわかっていない「チームワーク」というものについて、データをもとに分析し、よいチームワークのための行動原理を提案されている1冊です。
その内容はこれからご紹介していきたいと思いますが、まず最初にお伝えしておきたいことは、この書籍で書かれていることはプロジェクトマネジメントにおいても非常に重要な指摘がなされているということです。 『両利きのプロジェクトマネジメント』で言及している内容との共通点も多いと感じており、ぜひ、2冊を読み比べながら、プロジェクトを進めるためにチームはどうあるべきなのか、ということを考えていただければと思います。



『チームワーキング』の概要

書籍『チームワーキング』は、データとケースをもとにして、「チームを動かすスキル」や「チームを動かすものの見方」を論じた1冊です。提案されている視点や行動原理は大変わかりやすく、ビジネスの現場でも、まちづくりなどの活動においても、使いやすいものになっています。

著者の中原さん・田中さんは、「日本の企業の現場で起こっている危機の1つが「チームの機能不全」」だとして、私たちはチームを形成するスキルを学んでいく必要があると指摘します。

「多様化」の一途をたどっている職場では、同質的な人材が「あうんの呼吸」で「空気を読み」合って仕事をするということは、もはや「過去の遺物」になりつつあります。私たちは、強い職場を取り戻すために、基本に立ち戻り、多くのひとびとが交流しながら、成果を上げるための「チーム」形成のスキルを、もう一度1から学び直す必要があるのです。

出典:『チームワーキング ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方』(中原淳、田中聡、日本能率協会マネジメントセンター、2021年、17ページ)

そして、そもそも「ニッポンの会社にチームはあったのか?」と問いかけます。

もしかしたら、それらは「チーム」ではなく、「村」に近いものだったのではないか?
ーーー
自分から働きかけなくても、会社に行けば仕事はそこにあり、定年までそこで生きていける。そういう村の風土に甘えていた人も少なくないように思います。

出典:『チームワーキング ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方』(中原淳、田中聡、日本能率協会マネジメントセンター、2021年、222ページ)

この文章を読んで、みなさんはどう感じられるでしょうか?
中原さんらが指摘する問題意識に共感される方も多いのではないかと思います。私は、この文章に出会ったとき、何度もうなづきながら、読んでしまいました。拙著『両利きのプロジェクトマネジメント』の中でも、「実は私たちは「協力して物事を進めていく術」を知らないのです。「協力することが大事だ」というメッセージを耳にする機会は多い一方で、実は協力するとは具体的にどのようなことなのかを知らないのです。」と書いていたのですが、自分がもやもやと問題意識を持っていたことを明確に指摘してくださったように感じました。

では、「多くのひとびとが交流しながら、成果を上げるための「チーム」形成のスキル」とはどのようなものか?中原さん・田中さんの分析を見ていきたいと思います。



成果が出るチームと出ないチームの違い

中原さんらは、チームワークについてのデータ分析から、成果が出るチームと出ないチームには、以下の違いがあると指摘します。

出典:『チームワーキング ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方』(中原淳、田中聡、日本能率協会マネジメントセンター、2021年、64ページ)

成果の出ないチームは、「一人のリーダー」がチームをリードしていて、リーダーが設定した役割に従って着実にタスクを遂行することがメンバーの役割であると考えているのです。「一度定めた目標に向かってまっすぐに進んでいく」という固定的な見方をしているのです。
一方、成果が出ているチームは、チームを「常に想定外の変化をする、動的でダイナミックなもの」という見方をしながら、全員がリーダーとなって仕事を推進しています。目標や計画も一度つくって終わりではなく、仕事を進める中で見直しをしつづけるチームです。
中原さんらは、このような変化するチームの全体像を捉えながら前進させていくダイナミックなチームのあり様=「チームワーキング」が必要と指摘します。



チームワーキングに必要な「視点」と「行動原理」

そのチームワーキングについて、中原さんらは「チームワーキングに必要なチームを見つめる3つの視点」と「3つの行動原理」として以下を提示します。

チームワーキングに必要な「チームを見つめる3つの視点」
1. 「チーム視点」:チームの全体像を常に捉える視点
2. 「全員リーダー視点」:自らもリーダーたるべく当事者意識を持ってチームの活動に貢献する視点
3. 「動的視点」:チームを「動き続けるもの、変わり続けるもの」として捉える視点

出典:『チームワーキング ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方』(中原淳、田中聡、日本能率協会マネジメントセンター、2021年、66ページ)

チームワーキングを生み出す「3つの行動原理」
1. 「Goal Holding(ゴール・ホールディング):目標を握り続ける
 ・「全員がコミットする」目標を持ち続けている
 ・状況に応じて、目標に立ち返る行動を継続している
 ・(必要に応じて)目標の見直し、再設定をしている
2. 「Task Working(タスク・ワーキング)」:動きながら課題を探し続ける
 ・全員アクション
 ・チームリフレクション
3. 「Feedbacking(フィードバッキング)」:相互にフィードバックし続ける
 ・チームの目的を共有し続ける
 ・チームのフィードバックに関するグラウンドルールを設定する

出典:『チームワーキング ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方』(中原淳、田中聡、日本能率協会マネジメントセンター、2021年、83ページなど)

これらの6点をチェックリストとして見たとき、みなさんが関わっている仕事やプロジェクトのチームは、「チーム視点」「全員リーダー視点」「動的視点」を持ってチームを見ながら、目標を握り続け、動きながら課題を探し続け、相互にフィードバックし続けることができているでしょうか? それぞれの詳細はぜひ書籍『チームワーキング』を参照いただければと思いますが、この6点を眺めるだけでも、それぞれ感じるところがあるのではないかと思います。

プロジェクトマネジメントの観点から考えても、これら6つの観点は極めて重要です。チーミングに必要な6要素として書かれていますが、プロジェクトをマネジメントしていくために必要な6要素と言ってもよいくらい、プロジェクトでも不可欠な要素です。



プロジェクトにおける「チームワーキング」のためのアプローチ

この6要素は、『両利きのプロジェクトマネジメント』でも重視しており、考え方に共通する部分が多いと感じています。
6要素についてそれぞれ言及すると、下表のようになります。

上表では、『チームワーキング』と『両利きのプロジェクトマネジメント』の関係性を簡単に列挙しているだけですが、共通点が多いことはご理解いただけるのではないかと思います。 ここでは、その中でもポイントになる点について深堀りしたいと思います。

〜〜ing:し続けること

1点目は、「〜〜ing:し続けること」です。 上表の「3つの行動原理」は、すべて「ing」がついていて、「し続けること」の重要性が指摘されていますが、『両利きのプロジェクトマネジメント』でも重視している観点です。

プロジェクトが始まるタイミングで、チームがよい状態だったとしても、その後もそのままよい状態でいられるとは限らず、チームをメンテナンスし続ける・最適化し続ける(=ing)ことが重要なのです。

出典:『両利きのプロジェクトマネジメント』(米山知宏、翔泳社、2025年、114ページ)

プロジェクト開始時に飲み会をすれば、よいチームでいられるでしょうか? プロジェクト開始時にプロジェクトのゴールを言葉にすれば、それ以降、見直したり、あらためて議論しなくても、メンバー全員が納得感をもってプロジェクトを進められるでしょうか?

そんなことはありません。 しかし現実のプロジェクトでは、プロジェクト開始時にかっこいいビジョンを描いて終わりというようなプロジェクトが少なくないように思います。 植物に毎日水を与えるように、チームもメンテナンスし続ける必要があるのです。 むしろ、最初のかっこいいビジョンより、日々のメンテナンスのほうが重要なのではないかと思います。『両利きのプロジェクトマネジメント』で「定例会議」を重視しているのもそのためです。

やるべきことをやることがよいチームづくりにつながる

2点目は、日々のアクションの一つひとつがよいチームづくりにもつながっているということです。 中原さんらは、「チーム全員がチーム視点で最後まで分担した役割をきちんとやり切っているかどうかが、チームの成果を分ける重要な要因」(『チームワーキング』p158)と指摘されていますが、プロジェクトマネジメントにおいてもこの点は重要です。

「チーム」をよい状態にしていくためには、チームのあり方に目を向けるだけでなく、メンバー各自が「プログレス」を生み出していかなければなりません。たとえば、いくらチーミングのためのコミュニケーションを実施したとしても、日々の中で行うべきToDoをやってこないような状況が続けば、よいチームでいられるわけがないのです。

出典:『両利きのプロジェクトマネジメント』(米山知宏、翔泳社、2025年、105ページ)

拙著ではこのように書いていましたが、だからこそ、定例会議を通じて小まめにお互いの状況を共有し、必要に応じてサポートし合ったり、軌道修正をしていくことが不可欠であるというのが『両利きのプロジェクトマネジメント』のスタンスです。

各自がやるべきことをやるからこそ、よいチームになる。 と同時に、よいチームだからこそ、各自がやるべきことをやりやすい状態になる。

自分のタスクをちゃんとこなしていくということは、巡り巡って、自分がタスクをやりやすい状態をつくっているとも言えるのです。



よいプロジェクトにしていくために、「チーム」にも目を向けよう

以上、『チームワーキング』の内容を参照しながら、プロジェクトをマネジメントしていく際のポイントを整理してきました。

よいプロジェクトにしていくためには、単に成果を生み出すことだけに目を向けるのではなく、チームの状態、チームのあり方にも目を向けることが重要です。 両方の書籍を一緒にお読みいただくことで、より、プロジェクトを進めていくうえでどのようなチームにしていく必要があるのかということが理解いただけるのではないかと思います。ぜひ読み比べていただきながら、みなさんのプロジェクトチームをアップデートしていきましょう。



『両利きのプロジェクトマネジメント』は2025年6月16日発売!!!



執筆者 米山知宏(よねやま・ともひろ)Facebook / Twitter
株式会社コパイロツト Project Enablement事業責任者 / 新潟県村上市役所CIO補佐官。 東京工業大学大学院社会工学専攻修了後、株式会社三菱総合研究所、新潟県新発田市役所を経て現職。 民間企業や自治体におけるデジタル・トランスフォーメーションや組織変革を支援しながら、プロジェクトを推進する方法論を探究している。 探求成果は株式会社コパイロツトのブログSpeakerDeckで公開している。

コパイロツトは、課題整理や戦略立案から参画し、プロジェクトの推進支援をいたします。お気軽にお問い合わせください!

お問い合わせ

  • COPILOT
  • SuperGoodMeeting
  • Project Sprint
TOP