コパイロツトでは現在、クローズドでプロジェクトリーダーのコミュニティを作り、交流会を開催しています。そこで、参加者の方々から実際のプロジェクトにおける課題や悩みを共有いただき、情報交換やディスカッションを行っています。
今回も引き続き、大手通信会社でプロジェクトリーダーを務める難波幸博さんによるレポートをお届けします。交流会の様子と、そこで共有された課題や悩みについて、ぜひご覧ください!
- 第7回プロジェクトリーダーコミュニティ企画の開催
- 1. リーダーの育成と配置のジレンマ
- 2. プロジェクトメンバーのアサインとモチベーション管理
- 3. プロジェクトリーダー世代=子育て世代
- ラップアップ:学びと次回への期待
第7回プロジェクトリーダーコミュニティ企画の開催
今回の交流会は参加者のキャリア多様で、プロジェクトリーダーの経験を経て経営に近い立場の方が多く、従来のプロジェクトマネジメントの手法や進め方に関する議論とは異なり、プロジェクトを取り巻く会社組織の論理や、プロジェクトリーダーの選任、育成に関する議論が中心となりました。
そのため、普段は「どうやってプロジェクトを成功させるか?」という話が多いですが、今回は「誰がプロジェクトを担うべきか?」や「組織がどう支援すべきか?」といった、プロジェクトをより広い視点から捉えた議論が展開されました。
1. リーダーの育成と配置のジレンマ
プロジェクトを成功に導くリーダーをどのように育成し、どこに配置するかは、組織にとって大きな課題です。特に、新規事業の推進者は、事業の成功のカギとなる存在である一方、企業の将来を担う幹部候補でもあるというジレンマが発生します。
- 新規事業の成長には、継続的なリーダーの専任が望ましい
- しかし、同じリーダーを長期間専任させると、企業全体のリーダー育成の機会が減る
- どのタイミングでリーダーを異動させるかが、事業と組織の成長に大きく影響する
「プロジェクトの成功」と「企業全体のリーダー育成」のバランスをどう取るかは、経営視点での重要な課題となります。
会社組織にとっては、試行錯誤の末、新規事業が軌道に乗り始めたタイミングで、プロジェクトリーダーにその成果を持って帰ってきてほしいものです。そのうえで、すでに大きな利益が取れている本業の中核人材に据えたいと考えるのが一般的です。一方で、そのリーダー個人にとっては、メンバーを集めて取引先やパートナー企業との関係が深まり、まさに「これから」というタイミングと重なってしまうジレンマが発生します。
2. プロジェクトメンバーのアサインとモチベーション管理
リーダーの育成と並んで、プロジェクトメンバーのアサインの仕方もプロジェクトの成果に直結する重要な要素です。今回の交流会では、自律的なプロジェクト参加と組織の課題としての業務分担のバランスについて議論がありました。
- 手を挙げてやりたい人が、やりたいプロジェクトに参加することで、熱量を持って推進できる
- しかし、その一方で、法令対応や義務的な業務など、人気のないプロジェクトには人が集まらない問題が生じる
- リーダーがどのようにメンバーをモチベートし、意欲を引き出せるかが鍵になる
- やりたいことだけ、やりたくないことだけ、という形ではなく、ポートフォリオ的にバランスを取ることで、メンバー自身も成長し、双方のプロジェクトで良い成果が出ることがある
プロジェクトリーダーに求められるのは、単にメンバーを集めることではなく、メンバーの動機づけを適切に行い、チームとしての成果を最大化することであると改めて認識されました。
3. プロジェクトリーダー世代=子育て世代
女性活躍の観点や、プロジェクトリーダーになる世代がちょうど子育て世代と重なることもあり、子育てと新規事業をリードすることとの関連の話題もあがりました。 親が子供にほどよい範囲で失敗を経験させることで、学びを深めることができるように、新規事業でも、適度な失敗を許容する環境が成長につながるという視点です。
- 子育てでは、子供が自ら考え、経験し、学ぶことが成長につながる
- 新規事業でも、試行錯誤を繰り返しながら成長していくことが重要
- 育児を通じて培った洞察力やマネジメント能力は、プロジェクトリーダーにも活かせる
- 育休期間をキャリアのブランクと捉えず、むしろ成長の期間と捉える考え方もある
- 計画通りに進まない場面への対応力、柔軟性が共通する
育休後に職場復帰した際、キャリアの断絶ではなく、新しい視点を持ち帰る機会と考えることで、より良いキャリア形成ができるのではないか、という議論が展開されました。
ラップアップ:学びと次回への期待
今回の交流会では、プロジェクトそのものの進め方ではなく、組織の中でのプロジェクトの位置づけや、人材の配置・育成といった視点での議論が中心となりました。プロジェクトの成功は、リーダーやメンバーの個々の能力だけでなく、それをどう組織として支え、成長させていくかによっても大きく変わるという考えが、多くの参加者に共有されたのではないかと思います。
また、プロジェクトに関わる人々のモチベーションやキャリアといった要素も、単純な人材配置以上に重要なテーマとなりました。プロジェクトに熱量を持って取り組む環境をどう作るか、やりたいこととやるべきことのバランスをどう取るかといった話は、今後の実践においても考えていくべき課題でしょう。
このような視点での議論が深まることで、リーダーや組織のあり方に対する理解がより一層広がっていくはずです。今後も、こうした交流を通じて新たな気づきを得ながら、それぞれの現場での実践につなげていける場となればと思います。
大手通信会社の研究開発部門に所属し、新規技術開発のプロジェクトを推進する。
前職の不動産ディベロッパーでの新規プロジェクトでコパイロツトから支援を受けたことをきっかけに、現在は副業メンバーとしてプロジェクトリーダーコミュニティの運営に従事。