技術の進歩に伴うわたしたちの生活の変化と、それに呼応するようにして移り変わっていくマーケティング環境に適応しながら、国内外のクライアントが抱えている課題にデータに基づいた戦略によって向き合っているエージェンシーVENECT。課題に対して常に最良のアウトプットを模索しながら、クライアントのために、ひいては生活者のために何ができるのか、と挑戦を続けておられます。
コパイロツトは、そんなVENECT社の化粧品ブランド認知獲得のためのプロモーションプロジェクトにおいてプロジェクトマネジメントを担当しました。VENECTの代表大脇さん、クリエイティブディレクターの大石橋さん、テクニカルディレクター加藤さん、またコパイロツトのプロデューサーの船橋、ナレッジ・ラボの八木とともに、このプロジェクトについて振り返ります。
プロジェクトの背景
―プロジェクトの背景と、コパイロツトにご相談いただいたきっかけを教えてください。
大石橋 実は3年前に別の案件で、プロジェクトマネジメントのリソースのことでコパイロツトさんにご相談した際、すごくスピード感をもって端的にアドバイスいただけたことが印象に残っていて。当時は諸条件あってご一緒できなかったのですが、改めて、関係者が多く、複数のプロジェクトをまたぐ必要があったり、時間が非常にタイトであるという条件が重なった案件に直面してみて、やはりプロジェクトマネジメントをちゃんとやらないとプロジェクトは成功させられないと強く感じたんです。 そこで再びコパイロツトさんにご相談したら、現状の体制図をふまえつつも、それをさらに昇華させた理想的な体制図の提案をいただいて。しかも現状の体制だと僕の仕事量が多くなりすぎてパンクしてしまうのではないかなど、リスクの話まで頂戴しながら、いかにそれを分散させ、プロジェクトをスムーズに進めていくかという具体的な考えをお伺いできました。
船橋 解決策はわりとはっきりしていたんです。リソースが足りないという課題もあったんですが、いわゆるコミュニケーションと、タスクを横軸でどう管理していくか、どういうふうにエスカレーションしていくのか、というような課題をVENECTさんが既に意識されていたので、必要だったのは社内の人数調整くらいでしたね。
大石橋 プロジェクトマネジメントのリソースを確保したいのに、採用などの方法がうまくマッチしなかったときも、やっぱりスピード感をもって対応していただきましたよね。あれもすごく助かりました。
大脇 そうでしたね。おかげで最近は社内で「あの案件だったらコパイロツトさん、どう?」みたいに、すぐご相談したらどうか、という話になるんですよ(笑)。
大石橋 クライアントとコミュニケーション取っていくときに、プロジェクトチームが例えば3人だとしたら、3者各々の専門領域で対応するようなことがあるんです。そうなると、クライアントにとっては情報量が多かったり、優先順位がつけづらくなったりしてしまいます。それを防ぎ、プロジェクトの質を上げていくためには情報のハブとなる人を置き、マンツーマンのコミュニケーションをとることが重要なのですが、ただ、社内のリソースの限界もありますし、特に突発のプロジェクトになると理想的な体制を組めなくなったりしてしまう。そういうときに、知見をもってハブになってくれるコパイロツトさんのような存在はすごく頼りになるんですよ。
どのようにチームを作っていったのか?
―コパイロツトは情報のハブを担うことになったわけですが、情報共有などどのように進めていったんですか?
船橋 VENECTさんとうちではそもそも、プロジェクト内で使われる用語だったり、肩書の定義が少しずつ違っていた部分があって、たとえば「ディレクション」や「クリエイティブディレクション」という言葉ひとつとっても、VENECTさんの中ではどこまでの業務領域について言っているのか、認識の差分を知っておく必要がありました。そこがわかっていないとコミュニケーションの細かいところで齟齬が生まれてしまう可能性があったので、メンバー同士で、意見を出し合ったり情報を共有したりして、交わされる用語ひとつひとつについて理解を深めていくところから始めましたね。
大脇 そうだったんですね。
船橋 大脇さんにしても実際にデータの解析や考察、それにもとづくメディアプラン策定をされていたわけですが、僕らから見ると「想定以上の領域までやっている」と驚くこともありました。加藤さんもそうで、一般にテクニカルディレクションと定義されている領域とは少し違っていましたし。
加藤 守備範囲が広いということですか?
船橋 そうですね。だから、一般的な理解をベースに話すと、話が噛み合わなくなる可能性があったので、いったん取っ払って考えることにしたんです。いまもお話ししたように、VENECTさんでは一人一人の業務範囲が広いんです。その部分をきちんと共通言語化していったほうが、チーム内のコミュニケーションがよりスムーズになると思ったので、僕らでそれをやっていきました。
大脇 実際にプロジェクトを進める中では、提示いただいた体制から若干、形が変わってもいきましたよね。誰が何をできるのかを、お互いが仕事をしながら理解できたから、「もっとこの人を前へ出していこう」と相談もできましたし、船橋さんが熱い思いを持って(笑)「ここは僕が前に出ます」とおっしゃってくださったりもしましたし。そういう連携がごく自然にできたのは、よかったなと思います。
―そういった細かい相談はどのように進めていったんですか? 例えばミーティングベースだったのか、雑談ベースだったのか、あるいはどんなツールを使ったのか……。
大脇 これはコパイロツトさんのすごいところだと思うんですが、うちの進め方や動きにうまく馴染んでくださるんですよね。その場の打診も早い。だからツールや場所は関係ありませんでした。ミーティングの場とか、メールでの連絡だけじゃなくて、slack、メール、電話、毎日の朝のsync1……など、そのつど必要に応じて関わるというようなかたちで。
大石橋 朝のsyncは、もともとVENECTだけでやってたんです。ただ、タスクボリュームが多かったこともあり、コパイロツトさんのほうから参加の打診をしてくださって。それで、一気にプロジェクトのスピードが上がりましたね。 朝のsyncで完全にワンチームとして、前日に起きたことも共有しながら、「今日クリアすべきタスクはこれだよね」とすり合わせをできましたし、コパイロツトさんのほうであらゆるツールを使ってタスクを進めていただきました。「何かあったら言ってください」って、よくおっしゃっていただいたのですが、もう言うことがないくらい整理できていましたし(笑)、途中からプロジェクトに参加したメンバーも追いつけるような情報のアーカイブ化も率先してやってくださっていて。そこが一番助けていただいたところだと思いますね。
大脇 確かに、いろいろ先まわりしてもらったりしましたね。「あ、それですね、実は作っておいたんです」みたいにぽろっと資料を共有いただいたりとかして(笑)。先手をうって情報を共有いただいたり、適切なタイミングでご自分たちから動いていただいたり。会社間の壁がなくなっていって、すごくやりやすかったです。
大石橋 逆に、「この領域は自分たちではできないから、VENECTさんのほうで資料を作ってほしい」とご提案いただいたこともありましたね。であれば、と僕のほうで情報分解しながら資料を作成して、船橋さんとやりとりしながら、お互い納得した資料でクライアントとコミュニケーション取っていく場面があったりもして。足りないところをすぐにご指摘いただけて、とくにそういうところは一緒にやっていてバランスが良かったかなと思います。
プロジェクトを振り返って
―ここまでこのプロジェクトにおけるそれぞれの役割について話していただきました。それぞれの役割があるなかで、逆に重なり合う部分はどこだったんでしょうか。
大脇 まずビジネスゴールを、共通言語として持てたのはすごく良かったと思っています。 どんな小さなことを決めるときでも、それって本当にお客さんのためになるのか、読者のためになるのかとか、その先にいる人たちのためになる情報になるのかと、私たちは常に問いながらクライアントと生活者の間をきちんと繋いでいかないといけない。誰かの意見や要望に偏るのではなく、最終的なビジネスゴールをちゃんと話し合いながら進められたのは、ゴールへ向かう目線が同じだったんだなと思っています。チームとして組んで心地が良かったのは、そこが共通していたからというのはありますね。
船橋 ゴールへの目線は重なる点が多かったですし、VENECTさんの指針ははっきりしていたので、僕らとしても動きやすかったんです。大脇さん、大石橋さんがワン・オン・ワンで話したことが指針になっていきましたし、それは複数の解釈がないワンワードだったりすることが多かったので、合わないことが出てきたら朝のsyncで問題提起して解決したり、徐々に共通言語を増やして、同じ意思を保つようにしていきました。でも、実はそれは僕らコパイロツトがいつもやっているやり方と似ていたりもして。 一方でsyncによる認識合わせだったり、ちょっとした言葉の使い方だったり、ドキュメントの活用法だったりといった、VENECTさんの緻密な進め方はすごく勉強になりました。すでにしっかりしたスキームをおもちだったので、僕たちはオペレーションベースで肉づけしながら、進めていくことに集中できましたね。
今後の展望
―ブランドの認知獲得のためのプロモーションプロジェクトにおける課題も含め、今後どのようなコラボレーションをしていけるか、展望をお聞かせください。
大脇 今回のケースは、もうわれわれがクライアントに提案済みで受注ができている状態でお声掛けしました。今後はもっと前の段階、要するに提案の企画段階や、課題に対してどのように制作パートなどもあわせて編成・構築をしていくべきなのかなど、課題に合わせたチームづくりから一緒にやらせてもらいたいなと思っています。
大石橋 いま、メディアを活用したプロモーションプロジェクトのボリュームが増えてきていて、具体的な問題が浮き彫りになってきています。きっちりコントロールしなければいけないところとメディア側でクリエイティブにやっていただくところのバランスは経験と勘が大きいところがあるのですが、その属人的なところを今後は分解し、仕組み化していきたい。そこでどう質を上げていくか、というところを、一緒に追及していけたらと思います。
船橋 今回のケースでは、僕らはメディアと連携をとる経験が多くない中で試行錯誤しながら、成果物や品質のレベルをより高めようとしました。それはすごくいい経験でしたね。諦めずに粘る、品質を高める、そういう意識がメンバーのなかでもより強固なものになったんじゃないかなと感じています。今後もVENECTさんとご一緒させていただきながら、その意識をさらに高めていきたいですね。
大脇 あとは、勉強会は定期的に一緒にやらせてもらいたいなと思っていて。前にも一度させてもらっているのですが2、本当にさわりの部分だけだったんですね。距離がせっかく縮まっているので、スペシャリティの領域を絞って、それぞれの専門領域をもっと高められるような勉強会ができたらいいですよね。
八木 そうですね、「どういう勉強会をやろうか」みたいなところから一緒に作り上げることができると、会社の垣根を越えてナレッジ共有するための普遍的な手法の確立にもつながるのではないかと思います。 ナレッジという言葉はとても曖昧で、定義も人によってバラバラになりがちです。でも例えば、案件や勉強会を通して知った互いの「強み」は、企業に蓄積してきたナレッジ、それも超コアなナレッジだと思います。他にも、この人でないと分からないなど、明文化されていない属人化してしまっているナレッジもアクセス可能な形にするだけで、効率化だけでなく改善もより進めることができます。また教育に活用すれば組織全体としてもステップアップができるかもしれない。ナレッジマネジメントには可能性がたくさんあります。 そういうこともふまえて、VENECTさんと勉強会の取り組みは続けていきたいです。
加藤 個人的な要望なのですが、テクニカルディレクター同士でぜひ、情報交換をさせてもらいたいです。お互いの社内での立ち位置や仕事の領域を比較したり、「こういう情報を社内外で発信していったらいいよね」みたいなところで連携させていただけると、僕も幅が広がりますし。同じフィールドの人同士で会社の垣根を超えて刺激を受けられるような何かができるといいのかなと。
大脇 それはいいですね。やりましょう。ぜひやりましょう。
―是非ご一緒させてください。本日はありがとうございました。
Comment
VENECTは様々な案件を推進する上で、たくさんのパートナーと連携をさせていただきながら成果を追い求めています。パートナー各社とお互いを補う動き方をする中での一番の壁が共通言語化であり、お仕事の仕方や、言葉一つに含まれる対応範囲の認識、インシデント理解の差がプロジェクトの成功を大きく左右すると感じています。コパイロツトさんとはその摺合せがとてもスピーディーかつ、認識を属人化しない形で共有できました。今後もお互いにとって素晴らしい連携をして、クライアントの成果に繋がるよう取り組んで行きたいですね。ありがとうございました!(大脇さん)
制作領域における進行管理を中心とした、プロジェクトマネジメントは一般的だと思います。コパイロツトさんの価値は、制作進行をいかに円滑にするかではなく、ビジネスの成功に向けて何が必要なのか、それに対しての優先順位は何であるかを徹頭徹尾ブレないようコントロールしていただける事と考えます。これはクライアント窓口に立ってクライアントリレーションを行うのとはまた意味が異なります。
コパイロツトさんには、我々が掲げるフィロソフィーもご理解いただいたうえで、クライアントコミットしていただけたことが、我々にとっても、大きな価値提供につながりました。今後ともタッグを組みながら、より高みを目指したいです。(大石橋さん)
私は今回のプロジェクトにおいて、一部領域をメインに担当し局所的な立ち位置で関わらせていただきました。その中でもコパイロツトさんとは同じビジネスゴールを共通言語として持てたため、常に私たちと同じゴールに向かってプロジェクトマネジメントをしていただき、お互いの強みが発揮できたプロジェクトであったと思います。
今後は他のプロジェクトでも一緒の取り組みを増やすことにより、さらにお互いを高め合う関係性を構築できたらと思います。(加藤さん)
VENECTさんはレポーティングも含めて、プロジェクトに対するフィードバックや評価をとても大切にされていて、改めて自分たちの弱みや課題も実感することができました。また、目的に反する内容にはとことん突き詰めて対話し合う姿勢も勉強になりました。(船橋)
コパイロツトは改善意識の強い社風だと思っていますが、VENECTさんから今回、ふりかえりと勉強会のお話をいただいて、手法は違えど互いに似たものを持っていると感じるとともに、沢山学ばせていただきました。コパイロツトではその肝になるものを「ナレッジ」と呼び、「ナレッジ・ラボ」というチームがその有効活用を日々模索しています。ナレッジはスキルの属人化、効率の悪さ、関係性の悪化といったように組織の多くの問題のボトルネックになっているのですが、あまり意識されないことの方が多いこともあり、自律的に成長できるチームにしたい、けれど上手くいかない、という際には是非ゼロベースでご相談いただだければと思います。(八木)
(写真左から、コパイロツトの船橋、八木、VENECTの大脇香菜さん、大石橋智さん、加藤智司さん)
会社紹介
- VML株式会社は2019年4月、ヴェネクト株式会社に社名を変更されました。
- 2022年3月、本記事をブログに移管した際、社名の表記を改めました。