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クライアントと共に新規事業プロジェクトに取り組む、「3社協働チーム」の役割分担とメリット[パートナー座談会]

コパイロツトではクライアントのプロジェクトを推進していくにあたり、さまざまなパートナー企業とチームを組むことがあります。

今回は、これまで協働チームで支援してきたプロジェクトの中から、リンナイ株式会社様でご一緒した事例をピックアップ。主要なプロジェクトメンバー(3社)による座談会を実施しました。

なぜ3社でプロジェクトチームを組むことになったのか、また具体的にどのような役割分担を行い、プロジェクトを進めていったのかを振り返ってもらいました。

▼ご一緒したプロジェクト
https://copilot.jp/project/client/rinnai/

リンナイ株式会社の新製品開発・新規事業開発におけるブランドパートナーとして、スタジオディテイルズ・ビーズアンドハニー・コパイロツトの3社による協働チームが参画。2019年より複数の新商品プロデュース、リブランディングに携わっています。


今回のプロジェクトメンバー。左から船橋友久(コパイロツト)、今村玄紀さん(B&H)、服部友厚さん(スタジオディテイルズ)、多田知弥(コパイロツト)(本文中敬称略)

必要なのは「プロモーション企画」ではなく「リブランディング」だった

—— このプロジェクトが立ち上がった経緯と、3社によるチームで取り組むことになった背景を教えてください。

服部 2018年末、リンナイさんからスタジオディテイルズ宛に、自社商品のリニューアルとプロモーションに関するご相談をいただきました。プロジェクトを立ち上げるにあたり、まずは当社からコパイロツトさんにお声がけしたのがはじまりですね。

船橋 服部さんと一緒にクライアントにヒアリングをした結果、「今回、必要なのはプロモーションの企画ではなく、商品の根本的なリブランディングではないか」という結論に至りました。

プロジェクトの要件定義をして見せ方を変えるだけなら、僕たちだけでも支援できます。でも今回の商品の場合、ブランドとしての位置付けを明らかにし、場合によっては売り方まで議論していかないと、会社の財産にならないと考えました。

そこでブランドディレクターとして、今村さん(B&H)に参加してもらうことにしたんです。

20人以上の社員が参加するブランドワークショップからスタート

—— 3社が集まり、実際にはどのようにプロジェクトを進めていったのでしょうか。

服部 まずはじめに、B&Hさんが独自に設計している「ブランドスプリント」という、ブランディングの導入となるワークショップを社内で実施してもらうことにしました。

今村 販促プロモーションの担当者だけではなく、営業や開発、広報の方なども含めて20人ほどに参加をお願いしましたね。社内でどの方に参加してもらえればプロジェクトが成立するか3社で話し合い、リンナイさんにセッティングをお願いしました。

多田 正直、最初は参加者のみなさんに納得感があったわけではないと思います。リブランディングと簡単にいわれても何をしていいのかわからず、戸惑っていた人が多かったのではないでしょうか。

服部 それでもプロジェクトを進めることができたのは、おそらくリンナイさんの社内でも、ブランディングに対する危機感、何かしらこれまでと違う取り組みが必要だという機運が高まっていたからではないかと思います。僕たちの提案を、ひとまずは信じて受け入れてくれた、というような温度感でした。

船橋 ワークショップを通じて見えてきたリンナイさんのイデオロギー1をベースに、ブランドプロトタイプとなるビジュアルをB&Hさんに作り込んでもらい、提案しました。おそらくその提案が、本プロジェクトのターニングポイントになったのではないでしょうか。そのときの設計思想が、ご担当者の暗黙知を顕在化させた感覚がありましたよね。

服部 そうですね。ブランドスプリントを経て、自分たちで商品をブランディングし、売っていくことのイメージが明確になったのも大きかったと思います。

とはいえお互いにはじめての取り組みだったので、プロジェクト化するまでにはそれなりの時間とコミュニケーションが必要でした。担当者の方が予算を確保したり、調整をしたりと社内でかなりがんばってくださいました。

リンナイさんと取り組んだ最初のプロジェクトは、給湯システム「Micro Bubble Bath Unit(マイクロバブルバスユニット)」のプロデュース。2007年発売の「美・白湯」という旧製品をリブランディングした。前年比30倍となる販売数を記録。

視点や立場の違う3社が集うことで、クライアントとの対立構造が生まれにくくなる

—— 一般企業の方からすると、そもそも3社の役割分担がどうなっているのか、掴みづらいところがあるのではないかと思います。どのように協業していたのか、具体的に教えてください。

今村 主に服部さん(スタジオディテイルズ)が最前線に立って、契約面のことや社内調整なども含め、クライアントとのコミュニケーションを担ってくれていました。広告代理店でいうところのアカウント、クリエイティブディレクターの役割ですね。

コパイロツトさんは中立的な立場から、全体を俯瞰してプロジェクトマネジメントを行う役割。B&Hは特攻隊長的に、ブランドコンサルタントとしてガツガツ切り込んでいくようなイメージでしょうか。

3社協働チームの役割分担

多田 外部のソリューションチームではあるものの、僕たちプロジェクトメンバーもみんな、半分はリンナイさんの社員と同じ気持ちで参加させてもらっていました。

—— 企業が、今回のような複数社の合同チームに依頼するメリットはどんなところにあるのでしょうか?

今村 1社だけではなく3社がプロジェクトに関わる大きなメリットは、それぞれが異なる役割を担い、さらに状況に応じてその役割を柔軟に変えながらバランス調整ができるので、プロジェクトが発注側と受注側の単純な対立構造になりにくいことだと思います。

船橋 そうですね。こうしたプロジェクトでは、ブランディングやクリエイティブ視点の「あるべき論」と、社内の事情などの現状を踏まえた「とはいえ論」がぶつかりがちです。3社が関わっていると、一社がブランディングの視点から発言するとき、他の一社がクライアント側の視点に寄り添ってフォローし、もう一社が中立の立場をとる、というような調整ができるんですよね。

今村 今回のプロジェクトでいうと、多田さん(コパイロツト)のポジションも結構重要でした。他のメンバーだけだと、バックグラウンドや専門領域的にクリエイティブ寄りの視点が強くなるのですが、そこにコンサルティングとマーケティング・セールス寄りの目線を持つ多田さんが加わることによって、クライアントとビジネスサイドの話もできました。

多田 一対一の関係ではなく、それぞれの立場の人たちが何を大切に思っているのか、何を守ろうとして発言しているのかを複数の視点から理解することは大事ですよね。それぞれの主張や意見を踏まえたうえで「今取り組むことは何か」を建設的に議論できるようになりますから。

今村 3社の“人格”がそれぞれ異なっていることも、実は重要な要素だと思います。2社で組もうとすると、同じような人格——主義や哲学などが似通った会社同士になりやすい。その点、僕たちはそれぞれ違うイデオロギーを持っていました。

—— “人格”が違う3社が共にプロジェクトを推進していくにあたり、コミュニケーションで意識していたことはありますか?

船橋 付き合いが長いメンバーもいるのであまり意識はしていませんでしたが、プロジェクトの内容について議論する以前に、大前提として、自分たちの会社や個々人が何を大切に思っているのか、どうありたいか、期待値について、お互いに丁寧に共有していた気がします。

今村 リベラルな民主主義ですよね、本当に。それぞれがお互いの主義をきちんと共有して理解しあったうえで、議論を重ねていく形ができていました。

「会社の財産」となるブランド構築を目指す、最適なパートナーを選ぶには

—— 2019年に最初の商品リブランディングがスタートし、そこから枝分かれして30ほどのさまざまなプロジェクトが生まれ、現在に至ります。初期と比較して、手応えや変化を感じていることがありましたら教えてください。

多田 現在に至るまで、クライアント社内での新しい挑戦が少しずつ形になっており、成功体験が少しずつ蓄積されているのは良い傾向だと思います。

2021年9月、ハイブリッド給湯・暖房システム「ECO ONE(エコワン)」をリブランディング。ブランド戦略から販売戦略、各種プロモーション、営業ツールなどをプロデュース・制作している。

2022年2月には、新製品として無水調理鍋「Leggiero(レジェロ)」が発売。新製品開発、ブランド戦略、販売戦略、各種プロモーションツールをサポート、制作している。

今村 担当者の方から「社員の目が以前よりキラキラしているように見える」とおっしゃっていただけたのはうれしかったですね。引き続き取り組みたい課題としては、組織内で複数の部署をどう横断的につなぎ、統一されたブランドを確立していくかでしょうか。

服部 一つひとつの商品、携わったプロジェクトの成果は着実に出ているものの、会社の財産になる長期的なブランドの構築という意味では、まだまだ道半ばだとは思います。

船橋 我々視点だと、長くお付き合いをするうちに、クライアントから「3社協働のソリューションチーム」として認識いただけるようになったのは大きいかもしれませんね。

現在、ブランド構築の核となるチームをこの3社で担い、プロジェクトによって最適なパートナーとチーミングしていく体制ができています。3社の知見やノウハウだけではなく、コネクションをフル活用できるのもメリットの一つになっています。実際、一社だけでは実現が難しかったことが多々あります。

—— ただ企業側の視点で考えると、誰(どこ)にどんな相談をすれば最適なソリューションチームに出会えるのか、最初の接点が難しいかもしれないですね。

服部 確かに、その難しさはありますね。今回のようなプロジェクトで、企業がどのような目線でパートナーを選んでいくべきか——ひとつ言えることは、短期的な成果だけを求めるのではなく、中長期的な視点で考えてくれるパートナーを選び、できるだけ長く付き合っていくことでしょうか。

短期的に達成しなければならない目標を押さえたうえで、それだけではなく、将来的に目指している目標や、掲げているビジョン、ありたい姿についてもきちんと話していく。そうした話をするときの目線が合うパートナーを選ぶことが、最初の一歩なのではないかと思います。

会社情報
STUDIO DETAILS Inc.
https://www.details.co.jp/

B&H Inc.
https://beeshoney.jp/



  1. イデオロギー:ここでは企業がもつ思想や哲学、美意識など、不変的な「あり方」を指す

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