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「不確実性の高いプロジェクトをデザインする仕事」を手掛ける三社が集う、座談会が開催されました[オンラインイベントレポート]

2022年5月17日(火)にオンラインイベント「新規事業開発・サービスデザイン業界で働く人たちの座談会 〜不確実性の高いプロジェクトをデザインする仕事〜」が株式会社NEWh主催で開催されました。

今回は株式会社NEWhの吉田航也さん・岡本あかねさん、株式会社ロフトワークの上ノ薗正人さん、コパイロツトからは八木が参加し、4人でプロジェクトデザイン、プロジェクト推進をテーマにした座談会を行いました。

ここでは、当日の模様を一部ダイジェストでレポートいたします。

▼ゲスト (イベントページより引用)

八木翔太郎/株式会社コパイロツト
東京大学大学院学際情報学府博士後期課程。開発経済、イノベーション研究を経て、現在は主に社会学(実践理論)・哲学(プラグマティズム)に基づいたプロジェクトマネジメントの理論研究を行っている。総合商社の全社ITプロジェクト、米国財団法人のプログラムマネジメントに携わり、現在はコパイロツトにて様々なプロジェクトの伴走支援をするほか、プロジェクト研究のコミュニティであるProject Sprint Questの推進、共創型オンラインカレッジ(Project Climbing Challenge)の企画を通じて、新しい価値を創造するプロジェクトチームのための方法論を探究している。


上ノ薗正人さん/株式会社ロフトワーク・シニアディレクター
九州大学芸術工学部環境設計学科卒業。2017年よりロフトワーク京都に入社。web制作、コミュニティデザイン、空間プロデュースからデザインリサーチまで様々な領域のプロジェクトに携わる。2021年PMP®(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)取得。社外活動として、同年6月に知人の創業にジョインし共同代表としてPMO的業務を担当、2022年度より九州大学大学院芸術工学府非常勤講師としてプロジェクトマネジメントの講義実施など、プロジェクトマネジメントのナレッジを様々な場所・形で活かし伝える取り組みを行っている。 https://loftwork.com/jp/


吉田航也さん/株式会社NEWh・ProjectManager
デジタルエージェンシーからイノベーションデザインコンサルティングファームに参画し、新規事業開発支援事業を立ち上げる。プロジェクトマネージャーとして大企業の新規事業プロジェクトを50以上支援。toB、toC問わず様々な業種・業界で新規事業プロジェクトを牽引してきた。また、大企業社内ベンチャー制度審査員、ビジネススクール講師、イノベーションカンファレンス登壇など、新規事業を多くの人がより楽しく挑戦できるようノウハウのオープン化にも取り組んでいる。2021年1月よりNEWhに参画し、現職。 https://newh.co.jp/


▼モデレーター

岡本あかねさん/株式会社NEWh・ProjectManager
学生時代は人文社会学・社会教育学を専攻。卒業後はNPOに参画し、デザイン思考的アプローチで日本全国の地域課題・社会課題解決のためのプロジェクトを実践。その後、デザインコンサルティングファームに参画し、企業の事業開発・サービス開発 をプロジェクトマネージャーとして支援。2021年1月より現職。個人活動として、NPOや一般社団法人のプロジェクトマネージャー・コミュニティマネージャーを務める。人と人が出会うことで生まれる不確実なものにおもしろさを見出し、立場を超えた共創的アプローチで日々プロジェクト課題に向き合う。

プロジェクト“マネジメント”では語り切れない要素が増えている

イベント冒頭、各登壇者からいくつかの問いが提示されました。ひとつはプロジェクトを取り巻く背景について。もうひとつは「プロジェクトマネジメント」という言葉そのものの定義についてです。

「近年、プロジェクトそのものの難易度が上がっています。かつてプロジェクトと呼ばれていたものは、主に工場生産などを最適化するために行われていました。決められたゴールに向けた計画を守り、進行していくための手法がプロジェクトマネジメントだったんです。

でも今は、そのプロジェクトを通じて提供する価値について定義したり、組織やチームとして自分たちはどうあるべきかを問い直したりと、“マネジメント”という言葉では語れない要素が増えているように思います」(八木)

「まさに僕たちも、変化を前提としたプロジェクトの推進方法を模索したり、最適なゴールに向けてチームが進む方向を考えたりすることに頭を使い、価値を発揮することが求められていると感じます。自分たちの業務を“マネジメント”という言葉で表現するのが適切かどうか、チームでもよく話しています」(吉田さん)

コパイロツトでは「プロジェクト」の定義そのものを問い直すところからスタートし、従来のプロジェクトマネジメントを含めた「プロジェクト推進」の手法を探究し、実践を重ねています。

三社それぞれ呼称や言葉の使い方は違っていましたが、新規事業開発やサービスデザインのプロジェクトに携わるにあたり、「プロジェクトマネジメント」の領域を超えた役割が求められる点については、参加者全員の共通認識となっているようでした。

三社それぞれの特色が現れている、チーム構成と役割分担

業務範囲やプロジェクトの捉え方、直近の課題感などに関しては三社共通のポイントをいろいろと見出すことができた一方で、やはりそれぞれの特色が色濃くあらわれたトピックもありました。それが、チームの作り方と役割分担、プロジェクトに参加するときのマインドについてです。

クリエイティブカンパニーであるロフトワークでは、プロジェクトマネージャーを務める人の肩書は基本的に「クリエイティブディレクター」なのだそうです。

「名刺の肩書はクリエイティブディレクターなのですが、例えば2人以上のアサインがある場合は一人がプロジェクトマネージャー、もう一人がクリエイティブディレクターとして役割分担を行います。プロジェクトマネージャーのほうがすべての窓口を担うことが多く、また、プロジェクトに必要なミーティングを設計しています。プロジェクトを進めていくプロセスは、小さなワークショップの繰り返しともいえるかもしれません。ミーティングの進め方や伝え方など、細かいこと一つひとつをデザインするよう意識しています」(上ノ薗さん)

一方、大企業の新規事業・サービス開発に特化するNEWhではプロジェクトマネージャーとは別に、「サービスデザイナー」「ビジネスデザイナー」という職種をもうけていました。

「サービスの本質的な価値を追求するサービスデザイナーと、ビジネス的な観点からプロジェクトをより良いものに昇華していくビジネスデザイナー、そしてプロジェクトマネージャーが参加して一度チームを組み、そこから役割分担をすることが多いです」(吉田さん)

プロジェクト推進支援を専門とするコパイロツトの場合、基本的な肩書は「プロジェクトマネージャー」「プロデューサー」ですが、プロジェクトの内容に応じてプロデューサー的な動き方をしたり、ナレッジマネジメントを行ったりと、実際の業務はさまざまです。

「1人のプロジェクトマネージャーしかいないとメタな視点が漏れてしまうことがあるので、必ずサブ担当者と2人でプロジェクトに参加します。そして私たちの業務が一通り完了した後、できる限りお客さま自身でプロジェクトを進めていけるよう、何かしらの仕組みを残すことを心がけています」(八木)

手法やノウハウを突き詰め、最終的に行きつく先は「人との関係性」

さらにイベント後半、プロジェクトの受注の仕方や進め方についてのテーマトークが進む中で、「プロジェクト推進のノウハウを追及していくと、結局は人と人との関係性、コミュニケーションにたどり着く」という話になりました。

「ノウハウを詰めきった先にあるものは、究極のところ人対人のやり取りなのだと思っています。最近、第7版への改訂が行われたプロジェクトマネジメント標準体系『PMBOK』でも、ステークホルダーマネジメントやチームといったキーワードが使われるようになっており、手法やノウハウ以上に、人の関係性構築が軸になってきていると感じます」(上ノ薗さん)

そのため上ノ薗さんは複雑なプロジェクトに参加するとき、「プロジェクトメンバーの人間関係はどうなっているか」を丁寧に紐解くところから着手することが多いといいます。人間関係の状態と合わせて、どこまでの範囲の人たちがステークホルダーとして定義されているのかなどを把握するそうです。

この話について、吉田さんや八木も共感するところが大きかったようです。

「コミュニケーションの設計というか、人と人との関わり合いの再整理をしていく感覚もありますよね。プロジェクトマネジメント自体が、不確実な状態のものをみんなで実現していくためにどうするかを考える手法であると考えると、そもそも人の生き方の話にまでつながるんじゃないかと感じる瞬間があります」(吉田さん)

「以前、僕が師事していたアジャイルコーチングの師匠も同じことを言っていました。アジャイルも、突き詰めていくと最後は人間関係だ、と。僕自身はまだうまく言語化できていないのですが、今の上ノ薗さんのお話と通ずるところがあると感じます」(八木)

特に複雑なプロジェクトにおける人間関係の把握や、チームの状態を一度“同期”するための場として、コパイロツトは「定例ミーティング」を重要視しています。

「非同期のテキストチャットなどよりも、やはり定期的に同じ時間を共にして情報を共有しあった方が認識を揃えやすいんですよね。だからこそ会議体を整理し、アジェンダの立て方やミーティングそのものの進め方を綿密に設計して、繰り返し実行していくことが大切だと考えています」(八木)

座談会を終えて

今回の座談会ではレポート内でご紹介した以外にも、クライアントとの契約の形について、アジャイルとウォーターフォールを掛け合わせたハイブリッド型のプロジェクト推進におけるバランスのとり方、プロジェクトを進めるために必要なマイルストーンや意思決定の分岐点の設計についてなど、さまざまな領域に話題が広がりました。

新規事業開発やサービスデザインのプロジェクトに日頃から携わり、現場で探究と実践を繰り返している三社だからこその視点が交わって、共通点と相違点それぞれから学びを得ることができる貴重な機会となりました。

会社情報
株式会社NEWh
https://newh.co.jp/

株式会社ロフトワーク
https://loftwork.com/jp/

株式会社コパイロツト
https://copilot.jp/

コパイロツトは、課題整理や戦略立案から参画し、プロジェクトの推進支援をいたします。お気軽にお問い合わせください!

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