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【インタビュー】業務効率化にとどまらないLIXILのナレッジマネジメントー組織文化の源へー

企業やコミュニティがより高い創造性を求められたり、働き方そのものが多様化する中で、組織の知をどのように生み出し、いかに共有していくのかということが現代の組織に突きつけられている大きな課題の一つになっています。

そのような状況の中、株式会社LIXIL(以下、「LIXIL」)では、社員の自主的な活動をきっかけにして、15年以上に渡ってナレッジマネジメントの活動を丁寧に積み重ねてきました。最初は、日々の業務を効率化したいという思いではじまったものでしたが、今ではそれが社内外のつながりの中で創造性を高める活動につながったり、社内の文化そのものにもなりつつあります。

今回、LIXILでナレッジマネジメントを推進しているメンバーの皆様に、どのようなナレッジマネジメントを行っているのか、なぜそこまで力を入れることができるのか、ナレッジマネジメントをうまく回していくためにはどうすればよいか、ということについて伺いました。

ナレッジマネジメントを推進したいと考えていらっしゃる企業やコミュニティのご参考になるかと思いますので、お読みいただければ幸いです。


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LIXILが行っているナレッジマネジメントの取組

——LIXILではどのようなナレッジマネジメントを行っているのでしょうか

LIXILでは、部門横断でナレッジを共有する仕組みとして「知識の木」というシステムを導入していますが、ナレッジマネジメントの活動としては、ナレッジ共有だけでなく、人のつながりを作っていくための取組(社内SNS(Workplace)やスタッフ制度など)も両輪で行っています。 そして、ナレッジマネジメントの活動を表彰するために、ランキングを出したり、アワードを毎年開催したりしています。


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——「知識の木」は、どのような仕組みなのでしょうか

「知識の木」は、部門横断で使用しているナレッジ共有の仕組みです。個人がナレッジを投稿したり、他の人のナレッジを自由に活用することができる場で、2017年9月から運用がはじまりました。現在では、4000人程度が利用していますが、年間約5000件の投稿があり、約13万回活用されています。


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機能的なところでは、タグ付けやキーワード検索などの基本的な部分だけではなく、それぞれのナレッジを活用することによる時間削減効果についても入力できるようにしています。その数値を元にダウンロード回数も加味すると、「知識の木」による生産性向上は年間1.5億円程度になると考えています。


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きっかけは、工場の経理業務の効率化だった

——素晴らしい成果を生み出す取組になっていますが、そもそもどのようなきっかけで始められたのでしょうか

最初は、2002年に、ある工場の経理業務の問い合わせ対応を効率化するためにはじめた取組でした。問い合わせがあった内容をExcelに取りまとめて共有することで、徐々に問い合わせの件数が減っていきました。その後も、新しい問い合わせがあるたびに、EXCELに内容を追加していきました。

その後、4年ほどEXCELで運用をしていたのですが、LIXIL職員の手によって2006年にはWebベースの仕組みに変わり、約10年使われ続けました。2017年9月からは、「知識の木」を導入し現在も使用していますが、その思想のベースにはEXCELで運用していた問い合わせ対応の仕組みがあります。


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自発性を生み出すための仕組み

——作った仕組みが形骸化することなく、現場に根付いたものとなるために、どのようなことを意識されていますか
大事なことは、「自発性を促しながらSECIモデルを回していくこと」だと考えています。

※SECIモデルについては、コパイロツトが開催している勉強会(Night Flight)にて、立教大学の西原(廣瀬)文乃先生にお話いただいた際の記事をご覧ください→Night Flight by COPILOT #6 レポート「ナレッジマネジメント」×プロジェクトマネジメント 〜暗黙知と形式知の相互変換による知の創造プロセス~

SECIモデルは、野中郁次郎先生によって提唱された知識創造のスパイラルモデルですが、大事なのはこれをトップダウンに押し付けてやらせるのではなく、ボトムアップの自発的な取組として広まるかどうかだと感じています。


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そのためLIXILでは、単にシステムを導入するだけではなく、自発性を生み出すための様々な取組もあわせて行っています(たとえば以下)。


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これらの取組によって、「参加者側」も「運営者側」も自発的なメンバーが集まり、LIXILにとって意義のあるナレッジマネジメントが行えているのではないかと感じています。


ナレッジマネジメントの本質は、ナレッジ共有ではなく、働き方改革そのもの

——LIXILでは、ナレッジマネジメントの目的をどう定義されているのでしょうか

LIXILでは、ナレッジマネジメントの目的をナレッジ共有をするためのものとは捉えていません。ナレッジマネジメントは、「知識創造」をベースとした「働き方改革」そのものであり、「強靭で柔軟な組織」や「働きがいのある職場」を作るものと考えています。その結果、最終的には、単なるナレッジ共有ではなく、企業価値そのものの向上に貢献するものとして位置づけています。


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——現場組織に、そのような変化は生まれていますか

はい、変化が生まれていると実感しています。

たとえば、組織間の壁が以前より無くなってきたように思います。LIXILは2011年に5社が合併して生まれた会社です。合併当初はどうしても組織間に壁が発生してしまっていましたが、ナレッジマネジメント活動を地道に行っていく中で、LIXIL経理のナレッジを株式会社LIXILリアルティの経理の皆さんが活用するようになったり、株式会社LIXILトータルサービスの社員が推進スタッフに加わったりと、横のつながりが生まれています。


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——そのような動きを増やしていくために、意識している点はありますか

考え方のベースにSECIモデルを置いていますが、「共同化(Socialization)」「表出化(Externalization)」「連結化(Combination)」「内面化(Internalization)」のそれぞれをどう行うかということだけでなく、「S」の後にどう「E」に繋げるか、「E」の後にどう「C」に繋げるか、「C」の後にどう「I」に繋げるか、という「次のアクションへの繋がり」を意識しています。それぞれの取組が単発で終わってしまったら、たとえば「共同化したけど、それで終わり」「ワークショップをして表出化できたけどそれで終わり」という状況になってしまいますが、それでは意味がないと感じています。最終的には「S→E→C→I」が一連の流れのものとして繋がっていく必要がありますが、まずは、一つのアクションが次のアクションに繋がるような設計であったり運用が必要だと思いますが、実際にはできていません。たとえば、勉強会の開催は『内面化』に効果がありますが、そこで受講者との意見交換会をプラスすれば『共同化』の効果もあるのではないかと考えています。 あとは余談ですが、「SECIモデル」という言葉は難しく理解されにくい部分もあるので、「SECIモデル」言葉を使わないことも大事ですね。実際は使ってしまうことも多いのですが(笑)


社内外からの評価

——皆様の取組に対して、社内や社外からの評価・反応はいかがですか

社内外からとても嬉しい評価を頂いています。 社内からは、「新入社員や転勤して配属されたばかりの人にとって頼りになります」「資料作成や時間短縮に非常に役立っています」という業務の効率化に繋がっているという指摘であったり、「KMのおかげで、仕事のやりがい・働きがいや、人とのつながりに成果を感じています」というような、仕事のやりがい・働きがいにも繋がっているという声も頂いています。実際、アンケート調査結果でも、「KMで何かしらの成果を実感している」と回答したのが全体の75%でした。現場のメンバーからは特に、会社にある様々な困り事の改善に役立っていると実感してもらえているのではないかと思っています。

また、社外からは、多くの企業・団体から関心を持っていただいていて、視察や登壇の依頼もよく頂いていますが、嬉しいのは、それがKMの枠に留まらない、会社と会社との関係に繋がっていることです。たとえば、「働き方改革」や「イノベーションの起こし方」「ストレングスファインダー」についてのセミナーをLIXIL向けに開催頂いたり、KMのことでLIXILのお客様が営業部門を介してご連絡をくださった事例もあります。これからの企業が競争力を高めていくためには、他社と共創しながら新たな価値を生み出していくオープンイノベーションの取組が不可欠と考えていますが、そのような取組が実際に起こり始めていることをとてもうれしく思っています。


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ナレッジマネジメントの先に見ているもの

——これからナレッジマネジメントを通じてLIXILをどんな会社にしていきたいですか

まず、もっと人と人との繋がりがより密な会社にしていければと思っています。前述のように、LIXILは5社が合併した会社です。以前よりは改善されてきたとはいえ、まだ組織感の壁はありますし、人と人のつながりも充分ではないと感じています。ナレッジのやり取りを通じて、個人個人がより、楽しさを感じられたり、創造性を発揮できればと考えています。社外との関係性についても同様に、LIXILが持っているナレッジだけでビジネスを考えていくのではなく、他の企業・組織との関係の中で、新しいLIXILを創っていければと思います。


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そして、それらと共に、LIXILの文化自体をより良いものにしていければと思います。「おかげさま」「おたがいさま」「自分たちごと」という気持ちを常に持つようになり、みんなが助け合うチームに進化していきたいです。そのチームで、未来のLIXILが必要な「知」を生み出し、残していくことができればと思います。

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