コパイロツト独自のプロジェクト推進メソッド「Project Sprint」は、定例ミーティングを最適化しプロジェクトをチームメンバー全員で推進していくことを目指すための方法論として、2020年7月にメジャーバージョンが公開され、以降もアップデートを繰り返してきました。
過去のアップデートでは、具体的なノウハウの追記やドキュメント体系の再構築を行ってきましたが、今回のアップデートはアプローチの変更とそれに伴う考え方の変化を反映した、メジャーバージョンアップ(v3.0.0)となります。
メジャーアップデートの背景
これまでのProject Sprintでは、外部に対して一定の機能を果たすためのものとしてプロジェクトを俯瞰的に捉え定義してきました。そのため、まずはプロジェクトそのものの形が存在し、その形にプロジェクトチームが適合することで機能を果たすものと考えていました。プロジェクトチームは一定のプロジェクトの成果を達成するという役割の担い手でしかなかったのです。
変化の激しい時代にあって、複雑化した課題に多様なメンバーで向き合うためのメソッドを提供すべく生まれたProject Sprintではありますが、このようなアプローチではプロジェクトの変化に追いつけないということが分かってきました。なぜなら、環境の変化の激しさゆえに、プロジェクトの成果を外から俯瞰して予測することが難しくなってきたからです。
そこで、プロジェクトを俯瞰的に捉えるのではなく、プロジェクトの現場にいるプロジェクトチームの目線からプロジェクトを捉えつづけるというアプローチに、大きく舵を切ることにしました。プロジェクトチームが主体となってプロジェクトを定義し、また環境の変化に応じて再定義しつづけるという考え方で、変化に柔軟に対応し継続的に改善していける力が増したと考えています。
また、こういった根本的なアプローチに関するアップデートだけでなく、プロジェクト立ち上げ時のノウハウやプロジェクトゴールの定め方・アップデートの仕方など、より現実に即した記述も盛り込みました。プロジェクトの推進に汎用的に活用できるものになってきたのではないかと考えていますので、実際にご利用くださる皆さまからのフィードバックを楽しみにしています。
基本的なメカニズムの再定義
これまでは「プロジェクトを推進する」ということがProject Sprintの役割でしたが、上で述べたようなアプローチの変更に伴い、v3.0.0では、「プロジェクトチームがプロジェクトゴールの達成へと進んでいくための考え方や仕組みを提供する」ということがProject Sprintの役割であると捉えています。
これに伴い基本のメカニズムを、「個人単位で作成物の出力に取り組んだ成果を、プロジェクトチームとして定期的・反復的に持ち寄って擦り合わせ、プロジェクトを現在の状態から理想の状態に漸進的に近づけていくことによって、プロジェクトゴールを達成する」と再定義しました。
作成物の出力に取り組む中で発見された個々人のアイデアや問題点・違和感は、ミーティングのアジェンダとしてインプットされ議論されます。その結果、次に個々人が取り組むべきものごとや方向性が明確になり、次の取り組みからさらに次回のミーティングでのアジェンダの材料となる個々人のアイデアや問題点・違和感が生まれます。プロジェクトチームは、このサイクルを繰り返すことで継続的な改善を行いながら、プロジェクトゴールの達成に近づいていきます。
この一連の流れにおいて、作成物の出力に取り組むことは非常に重要な意味を持ちます。作成物に継続的に取り組めていなければ、課題や違和感に気づく機会が失われ、改善がストップしてしまいます。作成物に取り組むからこそ、問題をすぐに発見して適切なアジェンダを提案でき、ミーティングでの課題解決の質やプロジェクト全体の改善のスピードを上げることができるのです。
プロジェクトゴールの再定義
プロジェクトが成功しより大きな価値を生み出すためには、プロジェクトの進め方や進み具合だけでなくプロジェクトチームのあり方についても考える必要があります。そのため、これまでドメインとして定義されていたプログレス(プロジェクトの成果物やゴールにフォーカスした活動)とチーミング(チームメンバーの関係性にフォーカスした活動)それぞれに対応する「プログレスゴール」、「チーミングゴール」という概念を設定し、この二つを合わせたものがプロジェクトゴールであると捉えることにしました。
プロジェクトが目指すものは千差万別です。新規事業の開発という新たな価値の創出を目指すこともあれば、システムの効率化という決まった価値の実現を目指すこともあるでしょう。あるいは、自律的に機能する組織に進化することそのものがプロジェクトの到達点となることもあり得ます。プログレスゴールとチーミングゴールいずれに比重が置かれるかは、プロジェクトごとに異なってきます。
今回のアップデートにより、多様なプロジェクトのニーズを的確に捉え、プロジェクトゴールの達成をより効果的に支援できるようになることを期待しています。
解説・導入支援、記述への参加について
Project Sprintは、プロジェクト推進に悩むすべての人に活用していただけるようオープンソース化しているため、どなたでも閲覧・利用でき、また編集に参加することもできます。
お気づきの点や気になる点がありましたら、いつでもフィードバックをいただければと思います。解説や導入支援も承っていますので、Project Sprintが少しでも気になった方は、気軽にお声がけください。
Project Sprintの執筆担当です。
プロジェクトの現場とは少し離れた小笠原で、野生のイルカと泳いで暮らしています。実践知と理論知を取り込んで日々生き物のように成長してゆくメソッドを、Project Sprintとして皆さまにお届けすべく言語化しています。