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デザイン思考とプロジェクト推進 [オンラインイベントレポート]

2021年7月15日(木)、シリーズ第三回となるトークイベント「プロジェクト推進を考える会」を開催しました。今回のテーマは「デザイン思考とプロジェクト推進」です。

今回は、米スタンフォード大にてデザイン思考を学び、イノベーションのためのコンテンツやワークショップ・プログラムの開発・提供を行っている柏野尊徳氏をお迎えし、お話をうかがいました。

▼登壇者

柏野尊徳(かしの・たかのり)氏
アイリーニ・マネジメント・スクール代表。エンジェル投資家。 専門はイノベーションと起業家精神。慶應大修士取得。 スタンフォード大でデザイン思考を学んだ後、 関連教材を開発しダウンロード数は累計16万部。 開催講座は計5,000名以上が参加。 新事業開発コンサルティング等でパナソニックや東京工業大学など 様々な組織を支援。2018年設立のマネジメント・スクールは、 世界40カ国のスタートアップ関係者を扱う『Startup Guide』に東京代表機関として掲載。個人の活動としては、 プロボノとして長崎大学FFGアントレプレナーシップセンターの 外部アドバイザー、 南スーダンでの貧困対策プロジェクトの立ち上げ資金寄附などを実施。2020年より英ケンブリッジ大でイノベーション・ エコシステムを研究中。『地頭が劇的に良くなる スタンフォード式 超ノート術』著者。
https://ems.eireneuniversity.org/
Twitter @takanorikashino


菊地玄摩(きくち・はるま)
ユニバ株式会社 代表取締役
2003年、有限会社ユニバースソフトウェア(現ユニバ株式会社)の創業メンバーとなる。2006年、東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術専攻修了。2009年よりユニバ株式会社代表取締役。ソフトウェア製品の開発プロジェクトや新規事業に参加し、アイディアの深堀(プローブ)と新しい体験の実装(プロトタイピング)を行なっている。コパイロツト社のプロジェクト・スプリント/スーパーグッドミーティングスプロジェクトには2016年から参加。


定金基(さだかね・もとい)
株式会社コパイロツト共同創業者/エグゼクティブプロジェクトマネージャー
プロジェクトオーナーサイドに立ち、外部パートナーとしてプロジェクトマネジメントのサポートを行う。Project Based Working 社会に向けて、プロジェクトマネジメントを常にアップデートしつづける構造を構築中。MITテクノロジーレビュー日本語版のエグゼクティブプロデューサーを務めるなど、様々な共同プロジェクトへパートナーとしても参画。


「デザイン思考」とは何か

柏野さんが考える「デザイン思考」の定義は次の通りです。今回のイベント内でお話いただいたプロジェクトに関するトピックは、すべてこの考え方が前提となっています。

柏野さん:そもそもビジネスにおける"思考”とは、問題を見つけて解決することを意味します。それに"デザイン”の要素が付加され、組織中心ではなく「人間中心」の問題解決を目指すものになった。それが「デザイン思考」の基本だと、私は考えています。

組織中心の場合、プロジェクトのスコープとなるのは会社の売上など。人間中心で考えると、例えばユーザーの生活をどのように変えるのか、現状の社会課題をどう解消するのか、といった問いがプロジェクトの起点になります。

柏野さんは普段、イノベーションや新規事業創出などのプロジェクトに携わる際、このデザイン思考の考え方に基づいてコンサルテーションを行っているそうです。

デザイン思考で導く、プロジェクト推進に必要な3つの要素

プロジェクトを前に進めていくためには、どのような要素が必要となるのか。それが、このイベントシリーズを通してゲストのみなさんに投げかけてきた共通の問いです。柏野さんはイノベーションに関するプロジェクトを進める上で意識したい「3つの要素」がある、と答えてくださいました。

1)プロジェクト全体で目指すゴールが共有されている
2)現実的な制約や諸条件を客観的に把握する
3)撤退ラインなど、意思決定の基準がクリアになっている


それぞれの要素について、柏野さんのお話をもとに一つずつ詳しくご紹介します。

ポイント1:プロジェクト全体で目指すゴールが共有されている

イノベーションや新規事業創出などに関わるプロジェクトは、各ステップにおいて実験要素が強く、その成功/失敗によって舵の取り方が大きく変わるものです。不確実性が高いため、目指すゴールを設定しにくい側面もあるでしょう。

しかしプロジェクトを前に進めていくためには、ビジョンやゴールの明文化が不可欠です。売上などの財務目標だけではなく定性的な目標と組み合わせて、どんな状態を目指すのか、何を達成できたら成功なのか、何ができなければ失敗とみなされるのかなど、プロジェクトメンバーの共通認識をつくる必要があります。

<定性的なゴールの具体例>

  • マーケットの中でどのような存在/状態になりたいのか?
  • ユーザー、社会からどのような反応を得たいのか? など

また柏野さんは、プロジェクト内でさらに重要なのは「学習目標」だといいます。

繰り返しになりますが、イノベーションや新規事業創出を目的としたプロジェクトには、幾度もの失敗が必ずついて回るものです。(柏野さんいわく、「3回のうち2回は失敗します」)

「今回も失敗するかもしれないけどやる」というマインドセットでプロジェクトに取り組み、そこから「何を学ぶか」を明確にしておく。

<学習目標の具体例>
・自社の製品・サービスを届ける先のユーザー理解を深める
・例え失敗した場合も、次のステップに進めるための判断材料を得る など

学習目標をしっかり立ててプロジェクトを進め、失敗した場合は「なぜ失敗したのか」を分析して記録していく。この振り返り〜分析のプロセスがないと、プロジェクトがいつまでも完了せず、成果を生み出すことはできません。

ポイント2:現実的な制約や諸条件を客観的に把握する

どんなプロジェクトであっても、必ず何かしらの制約があるものです。予算や人的リソース、期限などの基本的な条件をはじめ、プロジェクトに関わる制約は、必ずプロジェクト開始前に客観的に把握しておく必要があります。

柏野さんは、プロジェクトを進めた場合の社内承認のフローや、ケースによってはキーマンとなる人物の性格などまで、プロジェクトを進行していくうえでボトルネックになりうる要素をまずは抽出し、プロジェクトを取り巻く状況を全体的に把握することからはじめるそうです。

ポイント3:撤退ラインなど、意思決定の基準がクリアになっている

目指すゴール以外にも、柏野さんがプロジェクト開始前にチームメンバーと共有しているのが「意思決定の基準」。特に「どのような状態になったら/何がわかったら撤退するのか」など、プロジェクトを完了させるときの撤退基準をあらかじめ構築しておくことが多いそうです。

思うような状態に達していない。ユーザー層がずれている。想定していた状況とリサーチ結果に解離がある——不確実性の高いプロジェクトでは特に、さまざまな取り組みを重ねるうち、想定外の"実験結果”が頻繁にもたらされるものです。

その結果がどのラインを超えたら、進行を停止してリスタートするのか。そうした基準があらかじめ検討されていないプロジェクトは、ずるずると期間だけが長期化し、いつまでもアイデア出しだけが繰り返されて形にならないことも多いのだとか。

撤退基準の例としては、「企業としての信念と相反する状態が発生したら撤退」「前提として策定していた戦略と、何かしら矛盾する情報が出てきたら撤退」などを挙げていただきました。

プロジェクトの目的・目標を、着実にチームの共通認識に

「デザイン思考とは、"人間中心”の問題解決である」

今回はこのデザイン思考を軸に、柏野さんがプロジェクトを推進していくうえで重要視している3つの要素をご紹介いただきました。

中でも「失敗を想定し学習目標を立てる」「撤退基準を予め決める」など、先を予測することが難しいプロジェクトの進め方について、具体的な検討事項をおうかがいすることができました。

コパイロツトが提供している、定例ミーティングを効果的に進行するためのクラウドサービス「SuperGoodMeetings」は、プロジェクトにおけるゴールや目標を定期的にチームメンバーと共有し、着実に共通認識へと落とし込むための仕組みづくりに役立てていただくことができます。

プロジェクト推進に課題を感じている方のためのサービスです。まずは1プロジェクト(無料)から、ぜひ一度お試しください。

supergoodmeetings.com

「プロジェクト推進を考える会」とは?

株式会社コパイロツトは創業以来「プロジェクト推進」に最大の関心を持ち、事業や独自の研究を続けています。これからさらに多様化/複雑化する社会に向けて「プロジェクトを推進させる」という考え方とスキルは重要になっていくと考えています。そこで、本勉強会では有識者の方との対話を通して以下の実現を目標としています。

  • 「プロジェクト」という概念を広く捉えて、時代に合わせた意味付けをする。
  • 「プロジェクトを推進させる」という考え方を定着させて、できる人を増やす。

コパイロツト勉強会のページを見る


  • このレポートは2021年8月24日にコパイロツトのnoteに掲載したものです。
  • 本イベントは、プロジェクト推進をサポートするクラウドサービス「SuperGoodMeetings」の正式リリースを記念して開催しました。

コパイロツトは、課題整理や戦略立案から参画し、プロジェクトの推進支援をいたします。お気軽にお問い合わせください!

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