プロジェクトマネジメント・ナレッジマネジメント・組織づくりについてコパイロツトが
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クラスメソッド社と行っている「Project Enablement」――プロジェクトを進めやすくするための環境・仕組みづくり

この記事では、現在弊社がクラスメソッド社(データアナリティクス事業本部>ビジネスソリューション部)でご支援をさせていただいている「Project Enablement」――「プロジェクトの進め方」や「プロジェクトマネージャーに求められるスキルや振る舞い」を言語化し、組織内に浸透させていくプロジェクト――の概要についてお伝えします。

なお、本記事は、ビジネスソリューション部佐藤さんとの連携企画となっており、佐藤さんによるブログ記事も同時に公開されています。そちらも合わせてお読みください。

dev.classmethod.jp

実際の取り組みを理解いただくために、今回プロジェクトをご一緒させていただいているクラスメソッド佐藤さんが執筆されているブログ(上記以外)をご紹介します。いずれも、とても読み応えのある深いナレッジです。

このような形で、実際のプロジェクトで実践を行いながら、プロジェクトマネージャーとして、いつ、何をすべきかを言語化しているのが本プロジェクトの取り組みです。

プロジェクトの進め方に目を向けることの意味

プロジェクトマネジメントの分野でいえば、「PMBOK」(Project Management Body of Knowledge)が知識体系として存在しており、多くの方が参照されていると思いますが、なぜ私たちはPMBOKを参照するだけでなく、自らプロジェクトの進め方やプロジェクトマネージャーの振る舞い方に目を向けるべきなのでしょうか。

1. 良い形でプロジェクトを進めるためには、そのプロジェクトにあった進め方が必要

1つは、プロジェクトごとに最適な進め方やプロジェクトマネージャーが取るべきアプローチが変わってくるためです。

そのことは、PMBOKも<洋服の仕立て>を意味する「テーラリング」という言葉で指摘しています。


プロジェクトマネジメントはプロジェクトのニーズに合わせてテーラリングする必要があるため、
本標準も本ガイドも共に、規律的実務慣行ではなく、規範的実務慣行に基づいている。

出典:PMBOK第6版(Project Management Inst. プロジェクトマネジメント知識体系ガイド PMBOKガイド 第6版(日本語) . 2018)



一つとして同じプロジェクトはない。

プロジェクト固有の特性とその環境に合わせてプロジェクトのアプローチをテーラリングすることは、 プロジェクト・パフォーマンスを向上させ、成功確率を高めることに貢献できる。

アプローチのテーラリングは反復的な性質を有するため、 プロジェクト・ライフサイクル期間中に常に行われるプロセスである。

出典:PMBOK第7版(プロジェクトマネジメント協会(PMI). プロジェクトマネジメント知識体系ガイド(PMBOKガイド)第7版+プロジェクトマネジメント標準: PMI日本支部 監訳 Kindle版. 2023)


つまり、「こうすればうまくいく」という絶対的な1つのやり方は存在せず、それぞれのプロジェクト自らが最適なやり方を生み出していく必要があります。

現代において、プロジェクトを進めていくためには、ゴール自体も動的な状況の中で、多様な思いを持った関係者やしばしば初対面のメンバーともコミュニケーションを取りながら物事を進めていく必要があります。そのようなプロジェクトの進め方は、引力の法則のような「物を手に持った状態から手を離せば、物は落下する」といった「こうすれば、こうなる」とシンプルに言い切れるものではありません。もちろん、組織や人についての研究は経営学や社会学分野の中でこれまで行われてきたものであり、当然参考になる知見は多々ありますが、それがそのまま実際のプロジェクトで使えるというものでは必ずしもありません。

「このプロジェクトの現在の状況を踏まえると、どうしたら良いだろうか?」
「○○や△△の考え・方法論が参考になりそうだが、このプロジェクトではどうすべきだろうか?」

プロジェクトをスムーズに進めていくためには、このような問いに各プロジェクトの当事者自身が向き合って、そのプロジェクトにとっての最適なマネジメント・進め方を自ら生み出す必要があります。

2. プロジェクトメンバーの学習・成長のために、進め方自体に目を向ける

もう1つは、プロジェクトが上記1のような性質、つまり、何かしら特定のやり方がそのまま適用できるものではない以上、プロジェクトを進めることについての学習や成長も、書籍を通じてではなく、実際のプロジェクトを通じて行われる側面が大きいのです。

それは、「とりあえず色々なプロジェクトに関わってみる」ことで学習できる側面もありますが、より学習や成長の質を高め、スピードを早めるためには、関わるプロジェクトの中で意識的に学ぶことが極めて重要で、そのためにも「プロジェクトの進め方自体に目を向ける」ことが不可欠と考えています。

なぜ、プロジェクトの進め方に目を向けると、学習・成長につながるのか。
それは、進め方に目を向けることで、進め方についての「仮説・検証」を自然と、かつ高速に回すようになるためです。

  1. まずは、「プロジェクト立ち上げ時には何をしたらよいだろうか?」「チーム内のコミュニケーションは、どのようにとっていったら良いだろうか?」「ふりかえりは、いつどのような形で行ったら良いだろうか」というようなことを検討し、実際のプロジェクトで取り組んでみる
  2. そうすると、うまく行ったところと、そうでないところが見えてくる
  3. 改善点があれば、改善策を議論し、再度実際のプロジェクトで実施してみる

このような仮説・検証サイクルを高速で回していくことで、進め方に目を向けずにプロジェクトを進める場合より、プロジェクトメンバーが成長しやすい状態になると考えています。そして、プロジェクトメンバーが成長するということは、組織や会社も成長するということです。

どのようなプロセスで知(プロジェクトの進め方)を生み出したのか

今回のクラスメソッド社(データアナリティクス事業本部>ビジネスソリューション部)との取り組みでは、下図のプロセスを繰り返し回しながら「プロジェクトの進め方に関する知」を言語化しています。

しかし、このプロセス自体は、大したものではありません。重要なのは、このプロセスを回し続けることです。

今回の取り組みの中では、一定期間ごとに上記①を行いながら(=大きなふりかえり)、可能な限りほぼ毎週、クラスメソッド社のプロジェクトマネージャーが関わっているプロジェクトのクライアントミーティングや社内ミーティングについてふりかえりを行い(=小さなふりかえり)、現状や改善策の確認するようにしています。

このような形で、実際のプロジェクトの状況に合わせて仮説・検証サイクルを高速に回すことで、プロジェクトの進め方を改善しながら、「プロジェクトを進める」ことについて必要な「知」がスピーディーに言語化されていくと考えています。

今後に向けて

最後に、今回の取り組みの今後について記載したいと思います。

「プロジェクトの進め方に目を向ける」ことは、実は簡単なことではありません。それは、検討する中身が難しいからではなく、「検討しなくても、悪い意味でなんとかなってしまう」ためです。プロジェクトがどのように難しい状況であったとしても、個人の気合と長い業務時間によって乗り切ってしまい、また、次のプロジェクトで難しい状況になれば、再び、個人の気合と長い業務時間で乗り切る。そのようなことが繰り返されると、「プロジェクトの進め方に目を向ける」ことは逆にナンセンスな振る舞いとして捉えられ(「気合で乗り切れ」)、時間をかけること自体がコストとして認識されてしまうことも少なくありません。

しかし、データアナリティクス事業本部>ビジネスソリューション部のみなさんは、組織的にもその重要性を理解し、「プロジェクトの進め方」を日々議論し続けています。本記事の冒頭の方で記載したとおり、「プロジェクトの進め方に目を向ける」ことは、より良いプロジェクトを行うために、そして個人・組織・会社が成長していくために不可欠なことです。

今回の取り組みは、すでに、次の世代のプロジェクトマネージャーのための学びの場にもなっていると感じていますが、その先には、必ず組織・会社の発展につながっていくものと確信しています。そのような魅力あるプロジェクトに関わる機会をいただけていることに感謝するとともに、引き続き、ご貢献できるように弊社としてもプロジェクトマネジメントの方法論をアップデートし続けていきたいと考えています。

(参考)Project Enablement(プロジェクト・イネーブルメント)とは?

「Project Enablement(プロジェクト・イネーブルメント)」は、プロジェクトの進め方そのものを最適化していく取り組みです。

下記ブログにて、「Project Enablement」に対する思いを書いておりますので、合わせてお読みいただければ幸いです。

blog.copilot.jp


執筆者 米山知宏(よねやま・ともひろ)(Facebook / Twitter
プロジェクトファシリテーター、プロジェクトコンサルタント。 プロジェクト・組織の推進をプロジェクトマネージャーとして関わりながら、プロジェクト・組織の未来に必要なナレッジ・知を言語化するサポートをしています。 対象分野は民間企業のDX領域が中心となりますが、シンクタンク・パブリックセクターでの勤務経験から、公共政策の立案・自治体DXに関する業務も担当しています。

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