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マネジメント経験ゼロのリーダーが、2年間「Project Sprint」を実践してみた

これは10年以上まともにチームのマネジメントをしたことがなく、他者への権限移譲・タスクの切り分けが大の苦手で、定例会議はムダなものだと思い込んでいたプロジェクトリーダー(私)が、およそ2年間にわたり「Project Sprint」のプロジェクト推進メソッドを取り入れ、実践した結果をまとめたものです。

はじめまして。情報発信チームのパートナーとして活動している、ライターの大島と申します。

2年前にはじめてコパイロツトさんとお仕事をご一緒することになったとき、原稿を書くために「Project Sprint」の資料をいただきました。しかし……当時の私には難しい内容が多く、言葉自体は理解できてもその本質にはたどりつけませんでした。

そこで私は、教えてもらったメソッドの一部を、自分が立ち上げたコミュニティの運営チームで実際に実践してみることにしました。

その結果、自分でも驚くほどプロジェクトと向き合う意識が変わり、手応えを感じることが増えたので、今回はその内容を具体的にご紹介したいと思います。

チームマネジメント経験ゼロ。「人に頼れ」といわれても……

私が取り組んでいるプロジェクトの概要は以下の通りです。ごくごく小さなチームではありますが、「メソッドを実践するのにチームの人数は関係ないんだな」と実感しています。

目的 同業者同士が交流を深めるコミュニティ(20名ほど)の運営
チーム規模 自分を含めて3名(全員兼業)
活動内容 イベントや勉強会の企画・運営/コンテンツ企画・制作・運用/入退会管理など

「Project Sprint」を知る前、私はこのチーム運営にとても悩んでいました。要因はいろいろあります。

1)自分がタスクを切り分けないとプロジェクトが進まない

自分ひとりで企画・運営が回らなくなり、他2人のメンバーに声をかけたものの、運営方針や活動の予定を握っているのは私ひとり。結局、細かいところまで全部自分で意思決定をし、「いつまでにこれをお願いします」とタスクをわたさないと回らない状況でした。私とそれぞれのメンバー1対1の不定期なやりとりが大半で、まだ「チーム」ではなく「外注」という感じだったと思います。

2)当初の決めごとがアップデートされず、実態とズレていく

はじめは2人のメンバーそれぞれに「イベントディレクター」「運営アシスタント」という固定の肩書きをわたし、それに該当する特定の仕事のみを手伝ってもらっていました。しかし状況が変わるにつれて、それが今のコミュニティに必要な役割とズレていく感覚がありました。かといって、肩書きを変えて新たにタスクを振り分けたとしても、このズレを解決できる気がしませんでした。

3)チームを運営するノウハウ・経験が自分の中に一切ない

経験豊富な方からみると、私の上記2つの悩みはごくごく初歩的なことなのかもしれません。ただ私は10年近くフリーライターとしてひとりで活動していたため、チームの運営経験、マネジメント経験が皆無でした。よく「もっと周りを頼ればいいのに」といわれていましたが、正直なところ、何を誰にどう頼ればいいのかさっぱりわかりませんでした。(そういう性格だから仕方ない、と諦めていた節すらあります)

「SuperGoodMeetings」を使い、定例ミーティングをスタート

このプロジェクトに「Project Sprint」のメソッドの一部を取り入れて実践してみた結果、どうなったのか。そもそも苦手意識が大きかった私にとっては、劇的な変化がありました。

2年の間、特に意識して実践したことは次の通りです。

1)個別のやりとりをやめ、「チーム」の定例ミーティングをセット

2021年春から、月に2回、オンラインでチーム全員が参加する定例ミーティングをはじめました。ミーティングの運営もメソッドにならって進めたかったので、「Project Sprint」のサポートツールである「SuperGoodMeetings」を使うことに。はじめの半年間ほどはミーティングの進行役を自分が担当し、とにかくメンバーに慣れてもらうことを意識していました。

初期の頃に入力した実際のSGMs画面。まだ運用に慣れておらず、アジェンダの粒度が荒かったり、目的がはっきりしていないものも多かったように思います。

2)タスクベースではなく、マイルストーンを設定して共有した

個々にタスクを振り分けてその進捗を確認するのではなく、「いつまでに何をクリアしたいか」「どういう状況になっていたら理想的か」を書き出し、2-3ヶ月ごとのマイルストーンとして全員の共通認識にしました。初期段階では、全員で話し合うのではなく、とりあえずわたしがマイルストーンを設定していました。

3)固定の肩書きではなく、それぞれの「役割」をアップデートした

「コミュニティ代表」「イベントディレクター」「運営アシスタント」という固定の肩書きでそれぞれのメンバーを認識することをやめ、改めてそれぞれがどんな役割を担えばいいのかを話し合い、アップデートしました。ちなみに私たちは最初の話し合いを、次のような手順で行いました。

①リーダーから各メンバーへ、今後持ってほしい視点を提供する

Before after
コミュニティ代表 コミュニティ全体の方針を決める
イベントディレクター コミュニティ内のコミュニケーションを活性化する
運営アシスタント 事務手続きを円滑に行う
コミュニティの活動を外に向けて伝える

② 1の視点をふまえて、自分が担うべきだと思う役割、行動を全メンバーが書き出し共有する
③ 自分の苦手なこと、周りのメンバーに補ってほしいことを書き出し共有する
④ それぞれのメンバーに対して期待する役割、行動をお互いに書き出し共有する
⑤ 3、4をふまえて、改めて自分が担うべきだと考える役割、行動をまとめて共有する

はじめてロールセッションを行ったときのボード。私たちのチームにとっては、大きな転機になったワークでした。

この3つの手法を取り入れてから、私たちのプロジェクトは目に見えて前進していきました。

「チーム」の基盤ができ、危機的な状況にも耐えられた

「Project Sprint」を学び、「SuperGoodMeetings」を使い始めてから約2年。現時点で実感できている主な変化、手応えには次のようなものがあります。

1)メンバー間の役割分担が明確になり、対等な「チーム」になった

肩書きではなくそれぞれの「役割」を意識するようになったことで、メンバー自身が自律的に考え、行動してくれることが増えました。私がタスクをいちいち分解しなくても必要な業務がきちんと遂行されるため、かつて私にかかっていた負荷は激減しています。それに加え3人でチームミーティングを行うようになったので、メンバーとの関係性が「外注先」ではなく「お互いに対等な関係の運営チーム」に変化できたことが本当に大きかったと感じます。

2)定例ミーティングで、一定のコミュニケーションが継続して取れている

私が「もっと周りを頼れば」といわれても具体的な対処法がわからなかったのと似たようなところで、「コミュニケーション不足」という課題に直面し、四苦八苦している方もいるのではないかと思います。私たちの場合、定例ミーティングがとてもよいコミュニケーションの場として機能しました。

メンバーと同じオフィスで仕事しているわけではないので、オンラインミーティングの時間でできる限り、お互いの状況変化を把握したり、課題を一緒に考えたり、不安な要素を洗い出したり。少なくともこの2年、私の認識している範囲にはなりますが、チーム内で深刻な認識のズレが発覚したり、大きな不満が噴出したり……といったことは起きていません。

3)マイナスな状況の変化にも耐えることができた

1、2でチームの基盤が固められた結果、マイナスな出来事が発生したときもなんとか乗り切ることができました。

2022年、私が諸事情で十分な活動をできなくなった時期があったのですが、メンバー2人がそれぞれの役割をしっかり果たしてくれて、活動量は縮小しつつもコミュニティ運営自体はスムーズに続けられたのです。以前のまま、私がすべてを握って個々のタスクを振り分ける方法を続けていたら、このプロジェクトは間違いなく、早々に破綻していたでしょう。

チームメンバーからのコメント

最後に、メンバーにはこの2年の取り組みがどのように映っていたのか、改めて聞いてみました。

ちなみに今回、改めてチームメンバーから話を聞いておもしろいなと思ったのは、「Project Sprintを実践しているぞ〜!という感覚はあまりなかったけど、SGMsを使うなかで自然と実行できている状態になっていたんですね」といわれたことです。

Aさん:「2年前までは達成したい行動指標はあるものの、タスク消化だけに気を取られ、プロジェクト全体の目標を把握しないまま動いていたように思います。

今は、定例ミーティングの度にSuperGoodMeetingsを使うので、タスクの進捗確認だけでなく、定期的に目標値と現状を照らし合わせる機会ができ、プロジェクトの状態がかんばしくないときにもいち早く気付けるようになりました。

自身の課題としては、ミーティングの限られた時間内に議題を効率良く最適なゴールへ導けるよう、アジェンダの立て方やファシリテーションの精度をさらに高めていきたいです」


Bさん:「SuperGoodMeetingsを使うようになってから、プロジェクトの目標やマイルストーンを確認する機会が増え、未来や理想の状態から逆算して『今すべきこと』を考えやすくなったように感じています。

SGMsのフォーマットに沿ってアジェンダを記入するだけで、話す内容が具体的になっていくのも面白いです。今後はミーティングで話したほうがよい内容と、チャットツール等での共有でOKな内容を、さらに見極めていきたく思っています」

苦手・できないと思い込んでいたのは、単に「方法を知らなかったから」

今では他2人のメンバーもずいぶん慣れてきており、定例ミーティングの進行役を交代で担ってもらっているほか、アジェンダの入力も各自が積極的に行ってくれるようになりました。私たちのチームには、もう「SuperGoodMeetings」が欠かせません。(議事録作成もタスク管理も、すべてここで行うようになりました)

今回ご紹介した私の経験は、3人という小規模なチームでの話であり、プロジェクト推進におけるごくごく一部の側面にすぎないと思います。

ただひとついえるのは、「マネジメント経験がない」「チームが苦手」「人を頼れないのは性格だから仕方ない」と思い込んでいた私でも、「Project Sprint」のメソッドを学びそれを一つひとつ実践することで、チームの状況を変え、着実にプロジェクトを前に進められたということです。

今年はさらにこのプロジェクトを発展させるべく、引き続き教えていただいたメソッドをふまえて、常にアップデートを意識しながらチームの運営を続けていこうと考えています。

執筆者 大島 悠(おおしま・ゆう)
ライター
企業広報領域を専門とするライター。2013年からフリーランスとして中小企業のコンテンツ制作、情報発信に携わっている。コパイロツトではパートナーとして、情報発信チームの一員として活動中。

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