プロジェクトマネジメント・ナレッジマネジメント・組織づくりについてコパイロツトが
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社内ラジオ始めました [ ナレッジマネジメント試行 ]

こんにちは。コパイロツト社内のナレッジマネジメントを推進しているカナです! 今日は、最近社内ではじまった新たな取り組み「パイロットキャスト」を紹介します。(23年12月開始)

「パイロットキャスト」は、簡単に言うと社内ラジオ。Zoomで録画して、その音声をYouTubeに載せる簡易的なもので、毎回コパイロツトのメンバーをゲストに迎えて最近の関心やこだわりを聞いています。20分程度で、移動時間やお昼ごはんの時間などに聞いてもらう「ながら聞き」を想定した内容です。

今回は、この社内ラジオがなぜはじまったのか、何を目指しているのかに触れながら、この取り組みを紹介していきます。

▼ナレッジマネジメントとは
知識を共有して活用することで新たな知識を創造すること。実践から知識を生み出し、それを循環させ、新たな知識が生まれる場を作ること。(文中では一部、ナレマネと省略形で記述)

コパイロツトの「ナレッジマネジメント」について知りたい方は、こちらも合わせてどうぞ blog.copilot.jp

ナレッジマネジメントにまつわる問題

もともと、社内のナレッジマネジメント推進担当チームには解消されない深い悩みがありました。それは「アウトプットのハードルが高い問題」です。

ハードルその1:時間がなかなか作れない状況

コパイロツトが支援しているプロジェクトは多種多様で、ひとつとして同じものがありません。必ず2人以上でチームを組んで支援にあたっており、各人の「得意」を活かし、必要なら新しいスキルを身につけ、ときには新しい方法を生み出しながら、プロジェクトの目的に合わせたオーダーメイドの方法で、プロジェクト推進を支援をしています。つまり、プロジェクトの支援をしているコパイロツトメンバーは実践知のカタマリ!

コパイロツトの実践知を集約・循環させたいナレッジマネジメント推進担当チームとしては、メンバーに、日々の試行錯誤をぜひとも共有してほしい! と意気込むのですが、ナレッジの共有のために時間を捻出してもらうのがなかなか難しい。

なぜなら現場は日々変わるプロジェクトの状況を追いかけ、次の次の次の手を考えて準備に時間を使っているからです。決まった手順でタスクを消化していく…わけじゃないのが私たちのプロジェクト推進。問題解決のために情報を集め、さまざまな選択肢があるなかで最適な打ち手は何かを考える、創造性が求められる仕事。

つまり、ある程度までがんばると、それ以上の時間の圧縮はできないのです。でも持ち時間は一人24時間。悩ましい……。

ハードルその2:アウトプット形式にまつわる難しさ

そして、ナレッジを共有するためには、何らかの形でアウトプットする必要があります。この「アウトプット」は、当初、ブログなどの対外的にも公開できる文章形式を想定していました。

しかし、この「文章形式」のハードルが高い。日頃から資料を作り、説明して周囲を動かしていくことに慣れている人でも、文章は書き慣れていない、苦手意識がある、という人も多くいます。さらに、”社外に公開できる文章”を書かなければいけない、となると心理的プレッシャーが増大し、ますます書くことから遠ざかっていきます。

こうしてハードル1×ハードル2という難易度の高い状況が完成。必然的に、ナレッジマネジメントの取り組みは後回しになってきました。時間的余裕がない中で苦手な「書く」に取り組むことを想像すると、必要性は理解できるけど、「やりたい!!」という熱い気持ちにはならないですよね。

問題解決の糸口

これまでにも、この問題を乗り越えるためにさまざまな案が出されてきました。

  • もはや自主的に取り組むのは難しい?書いてもらえるように呼びかける?
  • 実践を共有することの意義を伝えて各自に「これについて書きます」宣言をしてもらう?
  • いっそのこと当番制にする?

などです。でもコパイロツトの文化として強制的にアウトプットしてもらうのは違うし……と、これらの背景を踏まえてディスカッションする中で、たまたま出てきたのが「話してもらったものを代筆する」案。これが今回の新たな取り組みのヒントになりました。この案をきっかけに、次々にアイデアが展開していきます。

  • 代筆するといっても、我々もそれぞれ担当するプロジェクトがあり、時間がないのは同じ。いっそのこと「書く」ことを手放してはどうか?
  • 「これについて書きます」と自分でテーマを決めるのは難しいが、質問されたことに答えるという形ならやりやすい。
  • 公開=ちゃんと話さなければ、というプレッシャーがかかるが、社内向けならあまり身構えずに話せるのではないか。
  • 質問や話してもらう内容も前もって考えておくのではなく、1時間の枠の中で内容を相談➕録画20分、なら負担なくできるのではないか。
  • 話してもらっても聞いてもらえなければ意味がないので、シーンを選ばずに気軽に聞いてもらえることを大事にする。
  • その観点からコンテンツは音声のみ、長くなり過ぎないものにする。
  • YouTubeに限定公開する形にすれば、パソコンだけでなくスマホからもアクセスしやすくなり、移動中などにも聞くことができる。
  • 収録後に書き起こせば、共有可能な形式知(ブログ記事など)に変換もできる。

と、いうように具体案がトントン拍子に出てきて、最終的には「書く形でアウトプットができないなら話してもらえばいいじゃない!」と社内ラジオの形式に着地。

自分たちがナレッジ共有の方法に対していつの間にか持っていた「ブログに書く」という固定観念を手放すことで、「実践者→不特定多数に共有できる文章でのアウトプット」というステップから、「実践者→目の前の人に経験や考えを話す→特定の人に共有→不特定多数に共有できる形に展開」という、小さいステップに分けることができました。

ナレッジマネジメントの推進メンバーにPodcastの収録経験があり、音声編集のスキルも持っていたことも、この方法を採用する追い風になりました。

社内ラジオのねらい

こうしてはじまった社内ラジオ。取り組みとしてはまだまだこれからですが、大きく2つの面での効果が狙えるのではないか、という仮説を持っています。

効果の仮説1:もともとの狙いであったナレッジマネジメントの面での効果

人の思考は、言語化しフィードバックを受けることで深まっていきます。社内ラジオであっても、質問に応えて発話し、聞き手がそれに応える、そしてそれを聞いて考えて、また話す、というのも、思考が深まっていくひとつの形。これでもナレッジマネジメントに十分に寄与するのです。

普段、仕事をしているときのことを思い出してみてください。一人で仕事をしているときは黙々と進めているはず。もしかしたら「これは〇〇してから〇〇して…」と口に出しながら作業をしている人もいるかもしれませんが、多くの場合は目の前のことを”やる”ことに集中していて、その間に起きる脳内の思考は明確には言語化されていません。しかし、こういった言語化されない”考えていく道筋”にこそ、他に転用できるノウハウやコツ、つまりナレッジとして共有する価値があるものが詰まっています。

質問されれば答えを考えてしまうのが人間。これをうまく活かし、社内ラジオという場を借りて

  • なぜそう考えたのか
  • 何によってそう判断したのか
  • 何を狙い、どういう効果を見越しているのか

といったことを問いかけることで、聞く人と話す人の間で”考えた道筋”つまり、思考のプロセスの言語化が進めば、自ずとナレッジが炙り出されていきます。

その場で「明日から使えるナレッジ」は生み出されないかもしれません。けれど、こうした営みを続けていけば、ナレッジマネジメント推進担当が目指す姿である「コパイロツトの実践知を集約・循環させ、新しいナレッジを生み出す」につながっていくはずです。

効果の仮説2:社内ラジオが社内のコミュニケーションの質の維持や向上に効果があるのではないか

コミュニケーションの質の維持や向上といっても、狙いは「みんな仲良く」ではありません。私たちが仕事を円滑に進める上で、”日常のコミュニケーション”が重要になる理由があるのです。

コパイロツトは完全リモートワーク。普段のコミュニケーションはチャットツールにオンラインでの打ち合わせと、お互いの接点は最小限です。この方法は、情報伝達の効率はとても良い一方で、発言の背景を補完するための情報が少なくなります。この「発言の背景」を補完する情報が伝わらない状態が続くと

  • お互いの発言の意図を読み違える
  • 言葉にした以上のことが伝わらなくなる
  • お互いの認識が合っているかを確認する手間が増える

といったことが起きはじめ、「阿吽の呼吸」では動けなくなります。これが”日常のコミュニケーション”が重要になる理由です。

しかも、この状態が進行すると、日々の小さな生活習慣がやがて大きな病に発展していくのと同じように、組織の中に「言っても伝わらないからいいや」という諦めが蔓延したり、「わかってもらえない」状態が潜在的な怒りや悲しみにつながって心理的な分断につながったりします。

コパイロツトは必ず2人以上でチームを組んで仕事をしているとはいえ、普段から密にコミュニケーションを取っている相手は限られます。しかも、コパイロツトが大事にしている「目的を設定してしっかりアジェンダを作り込んで会議を進行する打ち合わせ」は、会議としては効率が良く成果の出る進め方ではある一方、雑談は生まれにくく”日常のコミュニケーション”の場にはあまり向きません。

だから、この社内ラジオでメンバー一人ひとりの最近感じていることや考えていることを発信することで、普段接点の少ないメンバーの「今の声」を届けたり、一緒に仕事をしているけど「知らなかった一面」を伝えていくことが、コミュニケーションの質の維持や向上に貢献するのではないか。そんな仮説を持っています。

まとめ

ここまで、2023年12月に始まった社内ラジオの取り組みと、狙っている効果について話してきました。こうした活動はまず続けることが重要で、続けていくことではじめて効果が現れるものです。この社内ラジオは多忙なメンバーのナレッジマネジメントに寄与するのか、効果が出るのか出ないのか……という仮説を胸に、まずはこれから半年かけてメンバー全員と、ひとり一本ずつ収録していく予定です。収録と平行して聞いてもらえる工夫もしつつ、活動を続けていきたいと思います。続報をお楽しみに!


コパイロツトでは、さまざまなクライアントに対するナレッジマネジメントの推進支援を行っています。ナレッジマネジメントを含め、チームでプロジェクトを推進できる状態をつくり、ボトムアップで組織変革につなげていくための取り組みです。詳細はお気軽にお問い合わせください。

www.copilot.jp




執筆者 長谷部 可奈(はせべ・かな)
プロジェクトマネージャー/ファシリテーター
前職はシステムインテグレーターに勤務。販売管理システムやECサイトのリニューアル案件でSE、プロジェクトマネージャー職を経験し、サービスデザインやDX案件の推進支援をしてきた経歴を持って株式会社コパイロツトに合流。ワークショップデザイナーやファシリテーターとしても活動実績があり、それぞれの “ちがい” が力になるプロジェクトを目指して活動中。ライフワークは、アクティブ・ブック・ダイアローグ®という書籍を使った学びと対話の場づくり。一般社団法人アクティブ・ブック・ダイアローグ協会のディレクターも兼務。

コパイロツトは、課題整理や戦略立案から参画し、プロジェクトの推進支援をいたします。お気軽にお問い合わせください!

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