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組織のミッションの達成とプロジェクトマネジメントを両立させる方法を、具体的なユースケースから考える[第2回プロジェクトリーダー交流会レポート]

コパイロツトでは現在、クローズドでプロジェクトリーダーのコミュニティを作り、交流会を開催しています。そこで、参加者の方々から実際のプロジェクトにおける課題や悩みを共有いただき、情報交換やディスカッションを行っています。

▼第1回のレポート
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第1回に引き続き、大手通信会社でプロジェクトリーダーを務める難波幸博さんによるレポートをお届けします。交流会の様子と、そこで共有された課題や悩みについて、ぜひご覧ください!

第2回プロジェクトリーダー交流会を開催

2024年3月、プロジェクトリーダーが交流を通してプロジェクト推進における悩み・課題を共有する交流会の第2回を開催しました。

第1回では、プロジェクトリーダーが抱える悩みにフォーカスし、共通する課題を見つけ出すことができました。今回は参加者の方から持ち込んでいただいた具体的なユースケースを例に、組織のミッションの達成とプロジェクトマネジメントを両立させる方法について議論をすることができました。

提示された課題──上司からの気軽な「問いかけ」を「指示」として受け取ってしまった故に起こるリーダーの孤軍奮闘

今回特に深掘りができたユースケースが、経営幹部からの問いかけに対してプロジェクトを動かした結果、リーダーが周囲の理解を得られず、孤軍奮闘することとなる状況でした。

経営幹部としては一つの仮説の提示でしかなかった問いかけを、「指示」として受け取り、十分に解釈がされないままプロジェクトチームが動き出さざるを得なくなり、プロジェクトリーダー自身の納得感も薄いまま結論ありきでの強引な運営に周囲がついていけなくなる現実がありました。

組織の中では良くある話で、経営視点で幅広い情報をもとに仮説を出す経営幹部と、より深い現場の理解と直接ステークホルダーと対峙するプロジェクトメンバーでは判断に必要な材料の質が異なっています。

その一方で、上司の指示にはなるべく希望通りの結果になるように意識的・無意識的に動いてしまい、上司にとって都合の良いプロジェクトの進捗報告になりがちです。

その裏では、プロジェクトリーダーが実情と乖離した方針になんとか合わせるべく現場の実情側を動かす労力を取られてしまい、結果としてリーダーが孤立し板挟みになってしまいます。

課題の背景──失敗を報告しづらく、そもそも失敗ができないストーリーでプロジェクトが進んでしまう

企業内の生存戦略として、上司、特に経営幹部にはなかなか失敗を報告しづらいという現実があります。そのため、うまくいっている部分を抽出したり、うまくいっている側面を強調するような報告になりがちです。

結果的に、経営幹部からの気軽な「問いかけ」については常に一定の正しさが証明されてしまい、見直されることがないままプロジェクトとして進んでしまうことになってしまいます。

また、最初から大きくリスクを取るのではなく、小さな実験をすることで実証しながら判断することがリスク管理になるのですが、大企業の場合は、大きな投資に対し大きなリターンを得る成功体験が多く、ウォーターフォール型の組織文化が根付いています。

リスク分散をしたいという意味で表面的には「アジャイルが良い」となるものの、実質的には着手までの検討が長く、全ての選択肢をテーブルに乗せながら大きな方針を決定し、その後失敗ができないようなストーリーで進んでしまうことも多々あるのが実態です。

これらの背景から、プロジェクトリーダーは経営幹部からの問いかけを「指示」と受け止め、その仮説を証明するような材料集めとプロジェクトの組み立てを行い、実行計画を立て、報告をし承認を得て、周囲もリーダー自身も納得感の薄い目標に向かってプロジェクトが進んでしまうことになるのです。

議論して見えてきた対策案──小さなプロジェクト、小さなチーム、小さな会議で進行し、小さな失敗を積み上げる

このようなユースケースに対し、今回の参加者からは似たような経験談や、そのときにどのように対応したか、どうしたら良かったと思っているか、などの有意義な議論をすることができました。

その中でも、やはり一番やるべきなのは、小さなプロジェクトにし、小さなチームで、小さな会議で進行し、小さな失敗を積み上げていくということが一致していました。これをどう実現するか、どう組織側に納得してもらうかは次の課題になりますし、実現した場合も常に実施できているかどうか振り返りながら進めていくことが重要そうです。

すぐできるアクション①:問いの再設定

この課題に対し、すぐにできることとして意見が上がったのが「問いの再設定」です。

経営幹部からの投げかけに対し、マネージャー層がプロジェクトにそのまま指示として落とすのではなく、一度何が「問い」なのかを立ち止まって考え、再設定することによって納得できる状態を作り、その納得感をプロジェクトリーダー、プロジェクトメンバーに広げていくことです。

すぐできるアクション②:ワークショップの実施

さらに、その手段として関係者が集まる「ワークショップ」の実施も有効なのではという意見もありました。利害関係者の意思を合わせながら、各個人がこのプロジェクトに何を期待しているか、このプロジェクトは何が制約なのかの認識を一斉に揃えることができるためです。

他方で見えてきた難しいポイント:決定者の決定

一方、合理的でありながら、組織の中で最も難しいのが、「決定者の決定」であるという意見もありました。権限規定で組織内での権限はルールとして定められてはいるものの、縦割り組織で権限が分散していることは、プロジェクトのように不規則で柔軟な意思決定が求められるときに必ずしも決定者が明確ではないことが多くあります。

利害関係者の「納得感」が重要であり、いろいろな意味でその納得感をより作れる人がリーダーとして決定者となるべきだろうという結論になりました。

新規事業に本気で取り組むのであれば、もっと極端に「出島」的なチームを作り組織とは完全に切り離すことで、既存の業務プロセスや既存事業の生存者バイアスのかかった意思決定から距離を置き、新たな市場を作るような事業を立ち上げられるという意見もありました。

会社組織を大きく変える経営判断が必要なためすぐに実現できるものではありませんが、こういった意見が出るほど、既存組織の中で新規プロジェクトを推進することに各社苦労されているのがよくわかる話だと思いました。

今回の交流会でわかったこと──それぞれ異なる試行錯誤のプロセスを共有することに意義がある

今回の交流会でお話したような「社内事情」は、なかなか具体的に話す機会が少なく、背景となる企業文化や事業の状況が異なるため、相談もしづらいうえに、逆にアドバイスも難しいと思ってしまいがちです。

今回の議論では、クローズドなコミュニティだからこそ具体的な相談ができたのと同時に、参加者のみなさんも同じような課題にそれぞれのアプローチで試行錯誤しながら取り組んでいることがわかりました。その経験を話すだけでも、思っていた以上に、社外でも役に立つアドバイスになることも良くわかりました。

こうした交流会をクローズドなコミュニティイベントとして継続的に実施することに意義がありそうだという手応えを得られたのと同時に、この場で集められた知見を発信していくことで、広くプロジェクトリーダーの皆様の孤独の解消にもつながるのではと改めて考えました。



コパイロツトでは、プロジェクトリーダー支援を中心に、方針策定、課題の発見・整理、チームビルディング、マイルストーン設計、タスクの進捗管理などプロジェクト推進全体を直接支援します。

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執筆者 難波 幸博(なんば・ゆきひろ)
大手通信会社の研究開発部門に所属し、新規技術開発のプロジェクトを推進する。
前職の不動産ディベロッパーでの新規プロジェクトでコパイロツトから支援を受けたことをきっかけに、現在は副業メンバーとしてプロジェクトリーダーコミュニティの運営に従事。

コパイロツトは、課題整理や戦略立案から参画し、プロジェクトの推進支援をいたします。お気軽にお問い合わせください!

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