オフィスで働く人、引き続きフルリモートで働く人、両方を使いわけながら働く人——現在どの企業においても、柔軟な働き方を選択する人が増えていることと思います。その中で社内のコミュニケーションをどのように深めていくか、新たな取り組みの必要性を感じている方が多いのではないでしょうか。
コパイロツトでは2022年12月から、メンバー同士でメンタリングを行う「MyPilot制度」の実践をはじめました。
私たちの社名「コパイロツト」は「副操縦士」という意味ですが、プロジェクトの副操縦士である私たちにも、自身のキャリアやスキルアップの面では「操縦士=パイロット」が必要なことがある。「MyPilot」という制度名には、「私のパイロット探し」という意味が込められています。
これまでは、主に共同創業者の定金が業務やキャリアに関する個人面談を行っていました。2020年に全メンバーがフルリモート勤務へ移行したため、リモート環境でのメンバー同士の関係性向上や、個人のスキルアップを目指すとともに、組織の変化に合わせてアップデートした個人面談が、この「MyPilot制度」です。
今回は制度の具体的な内容に加え、この制度設計に関する社内プロジェクトが立ち上がった経緯、実際に3ヶ月間実施した現時点で感じている手応えなどをふりかえりました。
「MyPilot制度」の具体的な目的と内容
まずはじめに、今回私たちが実施した「MyPilot制度」の初期設計内容をご紹介します。
1)制度の目的
メンバー同士の関係性の質を向上させる以外に、設定した目的は大きく2つ。1つは、それぞれのメンバーに合ったメンタリングを実行し、組織として前進すること。もう1つは、各メンバーのマネジメントスキルを高めるためのチャレンジの場をつくることです。
後者の目的に関して、この制度を実施することでメリットや機会が得られるのは、メンタリングを受ける側だけではないと考えていました。メンターをする側のメンバーにとっても、貴重な機会になり得るためです。
2)社内での位置付け
コパイロツトではMyPilot制度以外にも、社内で十分な情報共有やコミュニケーションを行うための施策や取り組みを模索しており、日々実践を重ねながらアップデートしています。
2023年時点での取り組みは下図の通りです。これまでの取り組みは、全メンバーまたはチーム単位で行うものですが、MyPilot制度は「個人間」のコミュニケーションを「深める」取り組みとして位置づけています。
3)制度概要と実施方法
制度の概要、実施方法は以下の通りです。当事者間の調整が必要な実施回数や実施時間には自由度を持たせました。
1. メンターの選定方法:メンティーがメンターを指名する
話したい・相談したい内容に合わせて、社内のメンバーからメンターをお願いしたい人を選びます。メンター側がそれを受けるかどうかは、内容やスケジュールなどの要因も影響するため任意としましたが、辞退する理由は本人宛に必ずフィードバックすることをお願いしました。
2. メンタリングの内容:当事者間で決める
話す内容についてはメンター/メンティー同士で決めてもらいました。通常業務で困っていること、相談したいことを話すだけではなく、働き方やキャリアアップなどに関する壁打ちをする、メンターのキャリアや業務姿勢を質問するなど、どのように活用できるかのサンプルを事前にいくつか提示しました。
3. メンタリングの実施方法:当事者間で調整する
実施方法についても、当事者同士で話し合って決めてもらいました。実施の記録はツール(SuperGoodMeetings)上で可視化することを基本とし、実施してみてよかったメンタリングのやり方や手法については、積極的に共有をお願いしました。ただし具体的に話した内容については、議事録やメモの共有を責務にはしていません。
4. 評価方法:会社を良くする活動への貢献として評価する
メンターとしての活動については、「会社を良くするための活動」に貢献したと捉え、個人の業績評価点に含めることにしました。本制度の実施にあたってメンター/メンティー双方がかけた時間、それによる成果を鑑み、評価に反映することを検討しています。
社内プロジェクト化した背景とチームメンバーの声
MyPilot制度立ち上げのプロジェクトは、メンバーのひとりが課題を「ActionBox」1に投稿したことからはじまりました。発起人となったのは、社内で採用関係の業務をリードしている船橋友久さんです。
「もともと、メンバーの人数が増えて業務内容も幅広くなっていく中で、定金さん(共同創業者)ひとりが全メンバーと面談し、すべてをフォローするのが難しくなっていることを課題と認識していました。それを解消するため、メンバー間でのカジュアルなメンタリングができないか、というアイデアが以前から出ていたんです。
またこの1年ほどで、入社時のオンボーディング施策としてのメンター制度に関してはしっかり仕組みを整えてきましたが、既存のメンバーに向けたものは未整備でした。そこで採用ロールとして社内プロジェクトを立ち上げ、2人のメンバーに声をかけて制度設計を進めていくことにしました」(船橋)
制度の内容は、この3名でディスカッションを重ねながら決めていきました。プロジェクトメンバーとなった斎藤大さん、山城理奈さんは、そのプロセスについて次のようにふりかえります。
「若干悩んだところといえば、メンターの選定方法についてでしょうか。メンティーは誰を選んでいいかわからない、メンターに指名されてもできるかどうか自信がない……など、マッチングが難しいのではないかという懸念はありました。
ただこの制度はメンティー側のケアだけではなく、メンターのスキルアップも目的としていました。だからはじめは全メンバーからメンターを選定するという、一番自由度の高いやり方で実施してみることにしたんです」(斎藤)
山城さんは、メンティー側の視点で考えたそうです。
「当初は、すでに社内で実施している『チームで推進する制度』(※2)のチーム内でお互いにメンタリングをしていく案もありました。
それも確かにわかりやすい方法ではありましたが、私個人としては、キャリア相談や業務に関する質問など、その内容によって相手を自由に選べる仕組みが社内にあった方がいいと考えていました」(山城)
第一回の実施。メンター/メンティーそれぞれが手応えを感じた
MyPilot制度設計がひと通り完了し、2022年12月から3ヶ月間、全メンバー参加のもと1回目の取り組みを行いました。はじめての試みであるため多少は戸惑いもあったようですが、各自が自由に制度を使い、いろいろな組み合わせでメンタリングを実施しました。
プロジェクトメンバーの3人も、メンター/メンティーとして参加しました。
メンティーに加え、メンターも経験した斎藤さんは...
「私はメンターとして指名いただき、子育てと仕事の両立を軸にいろいろな話をしました。はじめは、自分に何か役立てることがあるだろうか?と思っていましたが、私が話をするだけではなく、逆に相手に質問をする機会にもなりました。
このように1対1で深い話をする時間を、普段の業務の中でつくるのはなかなか難しいものです。今回の制度がなかったら、ここまでじっくり話をすることはなかったかもしれません」(斎藤)
山城さんも同じくメンターを経験しました。
「私は同じチームで仕事をしている若手メンバーのメンターをしました。通常の定例ミーティングの場では話すべきこと、アジェンダが詰まっていて、ちょっと気になっていること、急ぎではないが困っていることなどを話している時間がなかなか取れないんですよね。
でも同じプロジェクトに参加していたりすると、先輩や他のメンバーがどれだけ忙しいか目に見えてわかっているので、どんなに親しくても声をかけにくいものだと思います。特にオンラインだとそうですよね。
そういう意味では、会社の正式な制度として実行されることによって、メンバーが相互にフォローできる余地が増えたのではないでしょうか」(山城)
フルリモート環境の今だからこそ必要な制度
今後プロジェクトチームでは、第一回の感想・フィードバックを踏まえ、第二回の実施に向けて準備を進めていく予定です。
「今回の制度は、大前提としてフルリモート環境になったからこそ生まれたものだと考えています。みなさんそうだと思いますが、リモートになって移動時間が不要になった分、以前よりも細切れにオンライン上の予定が入れやすくなりましたよね。
そうした時間の使い方が当たり前になったことによって、オフィスにみんなが集まっていた頃の、業務の狭間にあったちょっとした対話の時間がこぼれおち、見過ごされているコミュニケーションがあると思います。
本来はこうした制度などなくても、しっかりメンバー間のコミュニケーションが取れることが理想ではあります。でもまずはそのための一歩として、MyPilot制度が役割を果たせれば良いと考えています」(船橋)
2023.6.7 追記
『MyPilot制度』第一回を終えたメンバー三浦によるブログを公開しました。
実際にどのように進められたのか気になる方は、ぜひこちらもご覧ください!
- ActionBoxとは、コパイロツトを良くする・改善するためのアクションを投稿する場所。GitHub上で運用されている。↩