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アジャイルに組織を作っていく方法論を「パターン・ランゲージ」によって型化した書籍を紹介

コパイロツトでは、ホラクラシー1を導入して組織運営を行っていますが、日々、組織を改善していく仕組みがあることの価値を痛感しています。

組織構造に対して違和感や課題感を提起でき、すばやく変化していくことができるのは、ヒエラルキー・固定的な組織に慣れ親しんだ我々には信じにくい部分があるかもしれませんが、変化の激しい現代においては不可欠な組織のあり方だと感じています。このようなアジリティ(俊敏性)がホラクラシーの特徴であり、ホラクラシーはアジャイルに組織を作っていくプロセスであると言えるのではないかと思います。
この記事では、アジャイルに組織を作っていく方法論を「パターン・ランゲージ」によって型化した書籍をいくつか紹介します。
各組織の状況に応じてパターン(型)を組み合わせて試していただきながら、最適なパターンを作ってもらえればと思います。

組織パターン


本書は、アジャイルなソフトウェア開発を行う上でのプロジェクトマネジメントと組織づくりの方法論をパターン化したものです。その根本には、「あるサブ組織単体としては凝集するが、サブ組織同士は全体の中で凝集しすぎない(疎結合でいる)」という生命体のような組織を目指す思想があり、ホラクラシーの考え方と重なる部分が多いです。


「全体としてより高度に凝集した組織を作り出すことだ。組織を構成する要素それぞれが、内部では凝集し、外に対してはできる限り疎結合であるとよい」(5.1.12 循環領域を形作る)


たとえば、「4.2.2 組織を細かくする」や「4.2.11 自分たちで選んだチーム」で主体性のある組織を作りつつ、「4.1.25 作業を中断して問題を取り除く」「5.1.18 責務を移動せよ」で俊敏に問題を解決していくという考え方は、非常にホラクラシー的です。実際、書籍「ホラクラシー」の中で著者は「スピードアップの鍵は減速にあり」2というフレーズにあるように、減速してでも組織的な課題を解決していくことの重要性を指摘しています。
図:「5.1.18 責務を移動せよ」のパターン

各パターンは以下の内容で定義されています。単にマニュアル的な方法論だけではなく、問題が生じる背景も記載されているため、より具体的にパターンの利用方法を検討することができます。

  • パターンの名称

  • 問題が発見されるコンテキスト

  • パターンの背後にあるフォースやトレードオフ

  • 解決策

  • 他のパターンへの参照


本書に記載されたパターンを参照することで、最終的には「このパターン言語により、フィードバックと洞察を利用して組織を強化し、微調整するためのパターンが提供される。これは本質的には修復の過程なのだ」(4.2 組織の漸進的成長のためのパターン言語)と指摘されているようなアジリティ(俊敏性)ある組織を作っていくヒントが得られるのではないかと思います。

アジャイルに効くアイデアを組織に広めるための48のパターン


本書は、組織を変革していく際の方法論をパターン化したものです。「アイデアを組織に広めるため」という書名になっていますが、単にアイデアを広めるということではなく、いかに組織を変えていくかということについて言及したものです。

具体的なイメージを掴んでいただくために、以下に48パターンの名称を記載します。

全体に関わるパターン

01:エバンジェリスト、02:小さな成功、03:ステップバイステップ、04:予備調査、05:ふりかえりの時間

序盤の活動に関わるパターン

06:協力を求める、07:ブラウンバッグ・ミーティング、08:コネクター、09:何かを食べながら、10:電子フォーラム、11:アーリーアダプター、12:外部のお墨付き、13:グループのアイデンティティ、14:達人を味方に、15:空間を演出する、16:イノベーター、17:やってみる、18:感謝を伝える、19:次のアクション、20:個人的な接触、21:便乗、22:種をまく、23:適切な時期、24:定期的な連絡、25:勉強会、26:テイラーメイド

中盤以降の活動に関わるパターン

27:著名人を招く、28:経営層の支持者、29:正式な推進担当者、30:アーリーマジョリティ、31:達人のレビュー、32:体験談の共有、33:みんなを巻き込む、34:ちょうど十分、35:身近な支援者、36:場所重要、37:メンター、38:謁見、39:相談できる同士、40:成功の匂い、41:勢いの持続、42:トークン

抵抗と付き合うためのパターン

43:橋渡し役、44:懐疑派代表、45:根回し、46:恐れは無用、47:お試し器官、48:将軍の耳元でささやく

各パターンは、下図のような形で記載されています。

図:「02:小さな成功」のパターン(英語版の書籍より)

  • はじめに​:著者の具体的な経験を短いストーリーで記述​

  • 目的​:その手法はどんな目的で使用できるか​

  • 要約​:パターンの要約

  • 状況​:パターンを使用する状況​

  • 問題​:パターンを使用する前に出現している問題

  • フォース​:パターンの概要(どのような力学が働いて結果が生まれるのか)

  • 解決方法​:具体的な手順​

  • 結果状況​:パターンを活用したことで期待される結果と、組織に与える影響(機能しないケースなどが記述されることもある)

  • 使用例​:ストーリー形式でパターンが活用されるシーン​


どのパターンも具体的かわかりやすく整理されているため、実際の組織で組織を変えていこうとする場合に使いやすいのではないかと思います。

パターンを適用するだけでなく、独自のパターンを創造していくこと

中埜氏が指摘しているように、パターン・ランゲージは他者が作ったパターンをそのまま適用することを目的としているものではなく、他者が作ったパターンを参考にしながら、独自のパターンを作っていくことに価値があるように思います。

253のパタンは、どんな国、どんな地方、どんな町、どんな計画にもピタリと当てはまるわけではりません。ここで挙げられたパタンをベースにしながら、計画者がプロジェクトやエリアによって、自由にパタンを取捨選択したり、新しくつくったりして再構築することが前提となっています。(中埜博、「まちづくり」から「まち直し」へ/パタンランゲージと「修復の原理」)


みなさまの組織でも、紹介した書籍に書かれたパターンを試しながら、それぞれの組織にあったパターンを創造していただければと思います。
「アジャイルに組織を構築していくためのパターン」をアジャイルに創造していくことができるかどうかが、社会の変化が速く、人材の流動性も高い現代においてはこれまで以上に重要になってくるものと考えています。



執筆者 米山 知宏(よねやま・ともひろ)
プロジェクトファシリテーター、プロジェクトコンサルタント。

プロジェクト・組織の推進をPMとして関わりながら、プロジェクト・組織の未来に必要なナレッジ・知を言語化するサポートをしています。
対象分野は民間企業のDX領域が中心となりますが、シンクタンク・パブリックセクターでの勤務経験から、公共政策の立案・自治体DXに関する業務も担当しています。


blog.copilot.jp

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  1. 具体的ツールとして、GlassFrogを導入しています。なお、GlassFrogを開発した HolacracyOne 社の組織構造はこちらで公開されています。

  2. 「私がリーンソフトウェア開発の世界で学んだ教訓は「スピードアップの鍵は減速にあり」。ガバナンスを行うことは減速に当たる。日々の仕事からしばし離れ、組織の型を向上させることに時間を割いて、さまざまなモノの味方を尊重しそれらを統合する。しかし、仕事を離れるのはオペレーションをスピードアップするためであり、優れたガバナンスが実現するものはまさにそれ、日々より一層効果的に、効率的に、精算的に仕事をこなすことなのだ。」(ホラクラシーより抜粋)

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