前回、経験学習モデルとふりかえりの関係についてまとめました。 今回はふりかえりをKPTベースにしている理由を話したいと思います。
※ KPT+Aについては、先週のこの記事で基本的な進め方を紹介しています。
いろいろなふりかえり手法を試してみた。
実はふりかえりをやろうと言い始めた頃、KPTでスタートしていました。 しかし、手法としてはコモディティだし、もっとインパクトのある方法論があるのではないかと、『アジャイル・レトロスペクティブズ 強いチームを育てる「ふりかえり」の手引き』という書籍を入手し、ふりかえり手法を片っ端からナレッジラボチームで試していきました。 この書籍では、レトロスペクティブ(ふりかえり)のプロセスをこのように定義しています。
この図の右のループが、ふりかえりのプロセスを示しています。 1.場を設定する。 2.データを収集する。 3.アイデアを出す。 4.何をすべきか決定する。 5.レトロスペクティブを終了する。 『アジャイル・レトロスペクティブズ』では、このプロセスごとにさまざまな手法が紹介されています。 これは「データを収集する」ための手法、これは「アイデアを出す」ための手法、といった具合です。
試してみたわかった2つの問題
さまざまな手法を試してみて、興味深い方法がたくさんありましたが、2つの問題が発生しました。
(1)複数の手法を組み合わせないと、ふりかえりができない問題 たとえば、「3.アイデアを出す」ための手法を試すには、その前の段階である「2.データを収集する」で、アイデアのベースとなるデータを集める必要があります。 つまり、原則どおりに実行するならば、5つの手法を組み合わせて初めてふりかえりができるということです。 コパイロツトでは、「1.場を設定する」と「5.レトロスペクティブを終了する」は、いまのところ時間の問題もあって宣言だけで終わらせていることがほとんどです(ここはまだいろいろとチャレンジしてみる価値があると思います)。 それでも2〜4のプロセスで、3つの手法を組み合わせる必要があります。 これはこれで組み合わせのベスト・プラクティスのようなものの可能性もあります。 しかしこれに関連してもうひとつの問題がありました。 (2)時間がかかりすぎる問題 ふりかえりの手法を組み合わせて、この3〜5つのプロセスをこなそうとすると、なかなかの時間がかかってしまいます。 手順に従って進めようとすると、だいたい2〜3時間くらい。 業務の中でふりかえりをワークさせるには、現実問題としてメンバー全員の時間を1時間確保するのがせいぜいではないか、という指標を設けていました。 もちろん、ふりかえりの対象期間が長いとか、参加人数が多いといった理由で、1時間以上のふりかえりを設定する場合もあります。 しかし、5〜6名くらいまでの人数で1時間で収めるのが理想です。 やがて、コパイロツトラボのメンバーのアタマに浮かび始めてきたのが、「やっぱりKPTなんじゃないか?」という意見です。
そして、KPT最強説へ。
KPTをさきほどの5つのプロセスに当てはめると、 2.データを収集する。= KeepとProblemを書く。 3.アイデアを出す。= Tryを書く。 があてはまります。 コパイロツトでは、これにActionを加えています。 そうすると、もうひとつのプロセスにも取り組めます。 4.何をすべきか決定する。= Actionを書く Actionという「収束」のプロセスががあることで、Tryはアイデアを「発散」することだけに集中でき、実現性などの制約にとらわれずに思い切った発想ができるというメリットも生まれます。 KPT+Aを採用することで、レトロスペクティブの2〜4のプロセスをひとつの手法で回すことができることがわかりました。 このような経緯を経て、コパイロツトでは、「ふりかえりはKPT最強説」に至りました。
しかし、KPT+Aは万能ではない。
とはいえ、ふりかえりにも対象や目的がいろいろあって、すべてをKPT+Aでカバーできるわけではありません。 たとえば、1回のMTGのふりかえりや、ふりかえりのふりかえりのような対象期間が短いときには、1時間もかけていられないため、「+ / Δ(プラス / デルタ)」という手法でクイックに5分程度で行うことがあります。 また、数ヶ月のような長期間のふりかえりには、「タイムライン」という手法を応用して、対象となる期間のできごとを思い出して共有するプロセスを導入しています。 では、KPT+Aではなく、こうした手法を取り入れるのは、どんなときで、どうやって実施するのか。 それは、また別の機会にお伝えしようと思います。 では、また来週。
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