このブログでもたびたび登場し、おすすめしている「ふりかえり」。
ふりかえりとは、一般的には、行ったことをふりかえる=過去のことをふりかえるもの(上図①)と考えられていますが、プロジェクトが「連続する<仮決定>の中で、それ自体をより良いものにし続ける行為」であるとするならば、別の視点からのふりかえりも必要です。1つは「別の時間軸」からのふりかえりであり、もう1つは、「別の視点(第三者視点)」からのふりかえりです。
このような形で「次元」を変えながら、自分および自分たちのチームを見続けること=対話し続けることが、プロジェクトをより良い状態にしていくためには不可欠です。
……とはいうものの、「ふりかえりには意外と慣れとコツとエネルギーが必要ではないかなあ」と思っています。
- 「ふりかえり」の大切さはわかれども……という方におすすめしたい「タイムライン」
- 「タイムライン」とは――説明と手順の一例
- 「タイムライン」の良いポイント4つ――記録を掘って、プロジェクトの全体像をつくる
- まとめ――時間の流れを追うことで残るもの
「ふりかえり」の大切さはわかれども……という方におすすめしたい「タイムライン」
たとえば「ふりかえり」の手法の一つとしてよく紹介される「KPT+A」。
良かったことや改善点を確認したうえで、具体的なアクションを明確にするやり方で、プロジェクトチーム内で簡単にふりかえる際に便利といわれています。
ただ、実際やろうとしてみると「改善点」ばかり書いてしまい、「良かったこと」をうまく出せなかったり、そもそも付箋に何かを書き出すことが難しかったり。結果として「改善点」ばかりが出てしまい、せっかく振り返ったのに向き合うのがつらいと感じてしまうこともあります。そういった理由から、はじめて「KPT+A」をやる人には「小さなことで良いから、Keep・良かったことを多めに出しましょう」と呼びかけることも。
また振り返ったあとに生まれる「アクション」。余裕があるときはいいのですが、プロジェクト進行中のさなかに、「ふりかえり」のたびにアクションが増えてしまうと、対応するのが大変になってしまいますよね。
「ふりかえり」が大切なことはわかっています。でも「ふりかえり」によって明らかになる課題や改善点と向き合うには一定の胆力が必要です。エネルギーが足りないときはちゃんと振り返れなかったり、形だけの実施といった事象が起こりやすくなってしまいます。これを書いているわたしも、「元気でないし、いまふりかえりやるのつらいなあ」と感じた経験があります。
そこで、今回は「これは比較的エネルギーが足りないときもできる」と感じた「タイムライン」の紹介をさせてください!
カレンダーやWBS、タスクリスト、議事録、会議のアジェンダなど、既にあるプロジェクトの記録を頼りながら振り返っていくので、個人の記憶力や瞬発力に寄らずにできますし、「タイムライン」を作るために手を動かしたり、その出来あがったものを眺めたりする時間には、日頃のスピードをゆるめ、物事に向き合いやすくしてくれる側面があるように思います。
「タイムライン」とは――説明と手順の一例
「タイムライン」とは
プロジェクトについて、時系列に沿って、起こった出来事や実施したアクション、感情などを整理しながら、そのプロジェクトで何が起こったかを確認し、見直すポイントやさまざまな発見をしていく「ふりかえり」の手法です。
手順の一例
- 長期プロジェクトであれば月単位、短期であれば週単位など、やりやすい単位で時間軸を用意する(オンラインで実施するのであればMiro等を利用するのがおすすめです)。
- プロジェクトの会議の記録やWBS、カレンダー、既に完了したタスク一覧などを見ながら、起こった出来事、実施したアクションを書いていく。遡る形でも、最初から埋めていく方式でもよい。
- 各自発見や、感情も付箋に書いて貼り付けていく。その際にフレームがあったほうがやりやすい場合には+Δ(よかったこと/改善したいこと)等を利用することも。
- 書いた内容を共有しつつ、追加でコメントしたり、思い出した出来事があれば追加する。
- 最後に今後行ったほうが良いこと、足りていないことなどを話しつつ、互いを労ったり、いま感じている課題について話して終了。
「タイムライン」の良いポイント4つ――記録を掘って、プロジェクトの全体像をつくる
①記録を並べる作業がヒントとなり、当時のできごとや感情を思い出しやすい
カレンダーやWBS、タスクリスト、議事録、会議のアジェンダなど、プロジェクトには何かしらの記録が残っているものですよね。それらのプロジェクトにまつわる記録を確認し、事実をタイムライン上に並べているうちに、できごとや思ったことなどを芋づる式に思い出していくことができます。
②プロジェクトの全体像を把握でき、改善点を発見しやすい状態になる
タイムライン上に起こったできごとや行ったアクションを並べることで、プロジェクトの全体像を改めて把握できます。全体を俯瞰して見られるようになると、躓いたポイント、良かったポイントなどを発見しやすくなりますし、何もない状態で改善点やよかったことを出していくより、具体的な記載がしやすくなるように思います。
③メンバーと一緒に「タイムライン」を作り、話しているうちに、次のプロジェクトでやりたいことなどが見えてくる
プロジェクトそのものを観察し、あれこれ話しているうちに、次にやりたいことや長期的な課題が話しているうちに浮き上がってくることがあります。
今回のプロジェクトではできなかったこと、こぼれてしまったものなどをストックしておくと、次の関連するプロジェクトを立ち上げるときに役立てることができます。
④チームメンバー同士で労う機会ができる
「ふりかえり」の場ではチームメンバーへ感謝を伝えたり、各自のがんばりを労う機会が作れます。「タイムライン」を作る作業を一緒にしていると、普段の進行では伝えきれていない感謝などを、伝えやすい気がしています。
まとめ――時間の流れを追うことで残るもの
冒頭引用した記事で、プロジェクトは「連続する<仮決定>の中で、それ自体をより良いものにし続ける行為」であり、「ふりかえり」は「絶対的なものが存在しえない中で、少しずつより良い状態に近づけていくためのもの」と説明されています。
「タイムライン」はプロジェクトの軌跡を作ってくれるものだとも思います。また、目的達成のために、チームで手探りで行った<仮決定>をより良いものにし続けようとした記録ともいえます。それはわかりやすく「今、役に立つ」ものではないかもしれないですが、その時間の流れのなかに、未来の自分たちを助けてくれるヒントが埋まっているのでは、とも思います。
すこし前に、当社のふりかえりが大好きなメンバーが、ふりかえりについて「直近のアクションをだすことが目的じゃなくて、個人の中に何かが残るかどうかが大事です」と言っており、わたしもしみじみと同意しました。「タイムライン」は時間を眺めるという行為によって、よりいっそう自分に何かが残る気がしています。
コパイロツトではプロジェクトで成果を生み出していくために、プロジェクトの進め方そのものを最適化していく支援も行っています。プロジェクトマネージャーだけでなく、プロジェクトメンバー全員で、状況に適応しながらプロジェクトを推進できる状態の実現を支援します。「ふりかえり」実施のサポートなどもお気軽にご相談ください。
編集者、プロジェクトマネージャー。情報発信と環境作りを担当。コパイロツトのサービス内容に加え、プロジェクトマネジメントに関する知見や魅力、コパイロツトの文化などを日々の発信で伝えられたらと思っています。