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長期プロジェクトで効果的な”変容させる”ふりかえり

これまで本ブログでも紹介してきたように、ふりかえりにもさまざまな手法があります。

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世の中の多くの長期プロジェクトが、心理学者であるタックマンが提唱した「タックマンモデル」におけるチームビルディングの5段階を経験しているのではないでしょうか。

コパイロツトで業務支援させていただいている多くの長期プロジェクトもその中の一つです。

それぞれの段階のチームの心理状態に合わせて、ふりかえり方法も変容させていくことが効果的なチームビルディングに寄与します。

今回は、「タックマンモデル」の5段階のチーム状態において私たちが実際に行ってきたふりかえり方法をご紹介していきたいと思います。

形成期(Forming)

チームが形成される最初の段階です。 チームが形成されたばかりで緊張感があり、お互いを探り合っている状態で、大なり小なりメンバーそれぞれが本音を隠し持っています。

メンバー全員が、同じ目標・課題感を共有し合えているのかが不透明な状況です。

このような初期段階では、「別の視点から自分を見る」という行為が重要と考えます。

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後続フェーズでも様々な形でのふりかえりを継続的に行っていく中でこのような視点を常に持っている状態と持っていない状態では、大きな差がうまれてきます。

コパイロツトでは、メンバーそれぞれがお互いに何を求めているのかを擦り合わせるために、双方の期待値を確認する「期待値すりあわせ」を有効な手段の1つとして取り入れています。

チームに関わる会社や部署、メンバーが多い場合には、まずはリーダーレベルで各社・各部署に対する期待値をすりあわせていくことからはじめてみましょう。

プロジェクトの初期で期待値を書き出し必要な役割を洗い出しておきます。
さらに、次のふりかえり以降に、そこからのズレや違和感を調整していく作業を続けていくことで機能するチーム形成へのステップを着実に踏むことが可能となります。

期待値すりあわせの実施例

  1. 各メンバーに期待していることを書き出す
  2. 必要な役割を洗い出す
  3. 役割をメンバーに割り当てる

混乱期(Storming)

チームが始動してすぐの時期は、他メンバーの自分と異なる行動や考えにメンバーの意識や関心が集中しがちです。
メンバー同士の意見のぶつかり合いが発生して混乱を招きます。
激しい意見交換でも表に出して、自分の意見を言い合えている状態であれば、まだ良いですが、これを内に秘めたままのメンバーが多くいる状態だと益々混乱を極めていきます。

ここでメンバー同士が正しい衝突をできるか否かがチームを成功に導く鍵となります。

実際に混乱を招く事象が発生していることから、KPTベースのふりかえりをします。

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ふりかえりの実施例

  1. 期待値ふりかえり
    1. 前回の期待値すりあわせからの変動内容を確認・調整する
  2. KPT+A
    1. データを収集する。= KeepとProblemを書く。
    2. アイデアを出す。= Tryを書く。
    3. 何をすべきか決定する。= Actionを書く
      ⅰ. コパイロツトでは、これにActionを加えています。そうすると、もうひとつのプロセスにも取り組めます。

混乱期の混乱度合により、実施方法やメンバーを検討して、ふりかえりの設計を行います。
大規模プロジェクトの場合は、チームの状態や関係性により適切な範囲に区切って、それぞれでふりかえりを実施し、結果をひとつにどうまとめるかを検討します。

  • 実施方法
    • 対面(オンライン含む)とするのか
  • 参加社・部署・メンバー
    • どこまでの範囲で実施するのか
  • プロセス
    • アジェンダ検討
    • クローズ方法の検討

統一期(Norming)

混乱期でさまざまな事象の経験を共有したチームは、メンバー同士の行動や思考性を理解し、これまでの経験をもとに策定されてきた一定のルールを守り、チームの目標を認識し合えている状態となります。

お互いを理解し容認している状態が整うことでメンバー一人ひとりの良いところを充分に発揮できる状況となります。

引き続き、KPTベースのふりかえりを実施しますが、このフェーズでは混乱期程、時間をかけて行う必要はないと考えます。

ふりかえりの実施内容は変わらずに、「期待値ふりかえり」と「KPT+A」を中心に行いますが、実施方法は簡易的なものへシフトしていけるように導きます。

この段階では、具体的により詳細な役割定義ができる状態へシフトしているため、「期待値ふりかえり」から、改めてロールを見直して「ロールセッション」へシフトしても良いかと思います。

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机上のやり取りで事足りるものは極力、オフライン作業として議論が必要なものに論点を絞った状態で、必要なメンバーとのみ対面(オンライン含む)で集まる場を設けます。

この段階では、過去に何度かふりかえりを実施済のため前回までのAction(タスク)の進行具合や効果測定を忘れずに行うことが重要となります。
さらに、今回議論が必要となった事象の経緯と収束結果、ネクストアクションをきちんと残すことも次回のふりかえりへ繋げる大切なステップです。

ふりかえりの実施例

  1. ロールセッション
    1. 前回の期待値すりあわせからロール(役割)を見直す
  2. 前回のふりかえりのふりかえり
    1. ネクストアクションの進捗状況を確認する
  3. KPT+A
    1. データを収集する。= KeepとProblemを書く。
    2. アイデアを出す。= Tryを書く。
    3. 何をすべきか決定する。= Actionを書く
      ⅰ. コパイロツトでは、これにActionを加えています。そうすると、もうひとつのプロセスにも取り組めます。

機能期(Performing)

これまでに蓄積した成功体験やノウハウを生かしチームとして成果が出せるようになる状態です。 メンバー一人ひとりが自立したアクションを取れるようになっています。

チームとして機能している状態ですので、定期的なふりかえりも統一期で簡素化したやり方を継続的に回していくことが重要となります。 安定した状態にあぐらをかくのではなくプロジェクト進行中に起こる小さな違和感や歪みを見逃さないように、ふりかえりを継続的に回していくことが最も重要です。

また、前回までのネクストアクションがきちんと実行されているかの確認を怠らないようにしましょう。

機能期のふりかえりの実施例は統一期の方法・手順と同様です。

散会期(Adjourning)

プロジェクトの目的達成やビジネス状況の変化や様々な制約により、チームはいずれ解散の段階を迎えます。

最後に、総まとめとしてプロジェクト全体のふりかえりを行いましょう。
次に同じようなプロジェクトへ携わる際のナレッジとして残せるように、という視点で全体ふりかえりを実施して、ドキュメントとして蓄積しておくことが重要です。

その際は、たとえば「AAR(After Action Review)」のフレームワークにもあるように、「実際に起こった事実」と「次に行うならばどうするか?」という仮説をそれぞれ言語化すると、有用なナレッジになると考えています。

最後に

なぜ、ふりかえりを定期的に行う必要があるのか。
まずは、その価値をきちんと自身の中で理解し、チームメンバーに共感を得ることが大切です。

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ふりかえりを通じて省察することで抽出したエピソードを検討し、その後の活動に役立つ「独自の知見」を導き出す。
それを形に残して蓄積していくことでナレッジとして生かされるようになります。

プロジェクト推進には、様々な課題と向き合う根気強さが必要で、緻密な作業も多いですが、ふりかえりも業務の一貫として、是非継続的に丁寧に取り組んでいってほしいです。

執筆者 三浦 祐子(みうら・ゆうこ)
プロジェクトマネージャー。
DX推進における部門横断プロジェクト支援や業務支援、Webサイト制作のプロジェクトマネジメントなど幅広く担当しています。 円滑なプロジェクト推進のためにクライアントに寄り添い、最適なチーム構築や目標達成のためプロセスを明確にし、具体のアクションに落とし込んでいくという基本を大切にプロジェクトマネジメントに尽力したいです。
執筆協力 米山 知宏(よねやま・ともひろ)
プロジェクトファシリテーター、プロジェクトコンサルタント。
プロジェクト・組織の推進をPMとして関わりながら、プロジェクト・組織の未来に必要なナレッジ・知を言語化するサポートをしています。 対象分野は民間企業のDX領域が中心となりますが、シンクタンク・パブリックセクターでの勤務経験から、公共政策の立案・自治体DXに関する業務も担当しています。

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